育児と通学。日本では両立が難しいと考えられている。堀井穂子さん(法4)は今年4月に出産を控えた妊婦だ。堀井さんは卒業後、出産の後に海外の大学院への進学を目指している。海外の大学院の中にはキャンパス内にデイケアセンター(託児所)があるところもあり、その有無が大学院選考のひとつの大きな要素になっていると言う。
彼女は大学側に、例えば出産と試験が重なった場合の考慮といったもので「慶大が先導して、妊娠や育児と通学の両立で困っている人のサポート体制を作ってほしい」と話す。慶大には現在、日吉キャンパスの協生館に「ベネッセチャイルドケアセンター日吉」という横浜市認可の保育所がある。しかし大学側が設置している託児所や保育所ではない。また、妊娠が理由での特別措置は特に設けていないという。
「妊娠が理由での休学申請は過去数件です」と学生部学事グループ課長の篠田一輝氏は話す。妊娠が理由で休学し、出産後復学した学生の数は正確には把握できていないという。中には退学する学生もいるのかもしれない。ただし大学院生ではそうした学生が復学することもあるそうだ。
「学生出産」意識変えて
学生部では相談があれば、個別に対応するという体制をとっている。「設備として託児所はありませんが、大学院生や通信生にも子育て中の学生はいるので対応しています」。お手洗いに設置されている子ども用シートや、状況に応じて保健管理センターでも相談にのっている。
他の大学や大学院、特に海外では学内に託児所が設けられているケースも多い。日本でも筑波大学や大阪大学などでは学内保育所が活用されている。
堀井さんは「需要より先に制度を整えることで人の意識も変わるのではないか」と言う。彼女は1年間交換留学生としてオランダで学んだ。海外では子育てと通学を同時期に行うことは日本より一般的であるという。また、学生時代は仕事よりも時間の融通が利くため、逆に子育てしやすい環境だとも話す。日本では勉強だけでなく仕事と子育ての選択を迫られることも多いが、堀井さんは「どっちも諦めたくないし、諦める必要もない」
価値観の多様性が広く認められる今、育児と勉学との関わり方も意識を変える時が来ている。
(小原鈴夏)