アジア開発銀行(ADB)総裁の黒田東彦氏による講演会「アジアの中の日本」が昨年11月30日、三田キャンパス東館ジーセック・ラボで行われた。主催は国際センターと国際人材創出支援センター。
黒田氏はアジアの経済状況について、近年先進国になれたのは、アジアの4匹のトラといわれる韓国、台湾、香港とシンガポールだけで、アジアはまだ途上国のままだ、と厳しい状況を述べた。

アジアの経済状況を語る黒田氏

ADBは報告書「2050年のアジア」を作成し、今後を見通す。4匹のトラをはじめとするアジア先進国や欧米諸国が支援を続け、2050年にアジアのGDPが世界の半分を上回ることが理想のシナリオだという。
日本の人口は年々減少し、高齢者層の増加が目立つ。社会保障の支出に目を向けつつ、社会経済の活性化に力を尽くすことが課題となる。アジアの中で日本は経済的に前進しており、科学技術も圧倒的な力を持つ。人口動態から生じる社会問題を変革するチャンスととらえ、マイナス要因をプラス要因に変えていくことが肝要だという。
若者に向けては、外国の企業や国際機関、大使館などで積極的に働いてほしいと話した。国際機関は多種多様な文化的バックグラウンドを持つ人々が集まり、一国の政府よりも複雑怪奇。日本と異なる環境で働くことで違った刺激を受け、面白い経験ができる、と黒田氏は伝えた。