▼狭く区切られたその空間に身を収めると、言いようのない孤独感に苛まれた
▼昨年の衆院選、初めて記入台に立った。「誰を選んでも同じ」「どうせすぐ変わる」。一丁前の理屈だけが頭を駆け巡る。来る日も来る日も動向を面白おかしく報じていたワイドショーの声は、もう聞こえない
▼自分が来ていい場所ではなかった。寒空の下、そんな考えが頭をよぎる。投票率は、戦後最低の59・32%を記録した
▼「市民諸君、すべてが和合、調和、喜び、生命である日が来るだろう。その日は来る。その日を来させるためにこそ、我々は死のうとしているのだ」
▼映画「レ・ミゼラブル」が公開され、300万人以上を動員している。舞台は、王政が復活し民衆が格差と貧困にあえぐフランス。ある女性は金策のために2本の歯を抜かれ、体を売って命の火を燃やした。「自由と平等」を求め闘志に燃える学生は、スクリーンの中で無残に散っていく
▼ルソー、ホッブズ、政治哲学、政治思想……。半分嫌々学んだ知識が、彼らの歌に絡みついてきた
▼また「独り」になったとき、きっと彼らの歌が聞こえてくるだろう。自分に託された1票に、次は堂々と文字を刻みたい。 (池田尚美)