開票中止、調査団結成
選挙管理委員会は先月、全塾協議会事務局長選挙に立候補している伊藤涼太さん(法3)・諸田直也さん(経1)ペアが不正を行った疑いがあるとして選挙の中止を通達した。全塾協議会から任命された調査団が不正の証拠を集めて調査結果を全塾協議会に提出・審議の後、立候補を取り消すか決定する。伊藤・諸田ペアが立候補取り消しになれば、岸信千代さん(商3)・辻上友里さん(経3)ペアの承認投票になる。 (片岡航一)
審議は今月22日
全塾協議会は先月22日、選挙管理委員会から文化団体連盟、全塾ゼミナール委員会、芝学友会所属の3人を調査団に任命。捜査内容は、騒動の発端となった音声ファイルの録音状況や選挙の過程、参考人からの事情聴取などを挙げている。
調査団が行う事情聴取は証言や証拠は文面、録音等で公表される予定。
調査を受けて行われる審議では再選挙の是非は問わず、伊藤・諸田ペアの立候補取り消しのみを検討する。再選挙は規約になく、立候補の取り消しも前例がない。
審議は調査団の所見をもとに、上部7団体の代表者が審議し、最終的に事務局長が承認する形。だが、最終的決定権を持つ事務局長が、不正疑惑が取りざたされている現職の伊藤候補。選挙管理委員会副委員長の佐野心一さん(文4)は、事務局長が審議の決定を翻す可能性を憂慮し、超法規的措置を求めたが、伊藤事務局長は規約を徹底する方針を示し、「(個人としての判断ではなく)機関として極めて謙抑的な決断をする」と話した。
審議は今月22日に開かれる予定の全塾協議会定例会にて行われる。審議後の開票結果をもとに新体制が発足する。通常、1月の全塾協議会で事務局長などの体制交代が行われるが、騒動が収束するまで伊藤事務局長体制が継続する。
立候補を取り消した場合に残された組のみで有効投票率10%を維持できるかは不明。伊藤事務局長は、当該候補者の獲得票を白票として残し、投票率を維持する可能性が高いと述べている。
全塾協議会事務局に伊藤陣営内部告発者
「私は伊藤陣営を内部告発します」。全塾協議会事務局員を名乗る匿名希望者から慶應塾生新聞会に1通のメールが届いた。送信者は、伊藤候補の支援者が票の改ざんと多重投票をしているところを目撃したという。さらに、「(支援者は)投票箱の鍵を開けることも可能と言っていた」と続けた。送信者によると、局員の不正は日常化しているという。
ただし、送信者とは現在連絡不能で、情報の信ぴょう性は定かではない。
「もっといじりたい」「どこでやるか」
不正疑惑の内容は伊藤陣営の票の改ざん。不正のやり取りを録音したとされる音声ファイルを入手した選挙管理委員会が、伊藤候補に再選挙を打診、拒否されたことを発端に今日まで続く。
音声ファイルの所持者によると、全塾協議会事務局の部室での録音とされる音声ファイルには「おれが100いれたから」「もうちょいいじりたい」「どこでやるか」など、票の操作ととれる会話が含まれている。渦中の伊藤事務局長は「いじるとは獲得票を数える票読みに詳しい情報と修正を加えること」として票の改ざんを否定。修正に「いじる」という表現については「言葉の選択と解釈の範囲」と説明した。
音声は会話の一部分のみで前後の文脈がつかめず、これだけでは不正行為が存在したとは立証しがたい。さらに匿名の告発人との連絡不能といった不確実性が残る。
選挙運営にも問題が散見された。選挙管理委員会はTwitter上で「SFCの投票率が低い。投票しないことは現状の承認」として投票を促した。これに対し伊藤陣営は、現職サイドを批判する偏向的広報活動だと抗議。同委員会は、そのような意図はなかったと謝罪した。
投票率向上へ向けての課題は多い。岸・辻上ペアは知人らを投票所に呼び込んでいた。伊藤候補の問い合わせで呼び込みを規制したが、翌日には投票率が急落。呼び込みをしなければ有効投票率を確保できない状況ともいえる。同委員会の佐野さんも「呼び込みをしなければ投票率が低くなる」と認める。
また、同委員会の人数は8人と少なく、全塾協議会内の他団体に援助を受けていた。他団体が運営に参加すると公平性が保たれない恐れがある。選挙期間中、協力団体が伊藤・諸田ペアを支援するビラを配布することに制限が設けられた。
投票用紙の管理にも問題はある。芝共立、信濃町キャンパスは運営を手伝う団体の部室で管理。三田、日吉キャンパスは全塾協議会事務局の部室に保管していた。部室内で投票用紙に触れることは不可能ではないという。これは例年行われていることだった。
一方、岸さんは騒動に対して「正直驚いている。自分の知らないところで選挙の騒動が大きくなっている」と述べた。