縄文犬 系統理解に期待
文学部民族学考古学研究室は、愛媛県久万高原町(旧美川村)上黒岩岩陰遺跡で発掘された犬骨2体の放射線炭素年代測定に成功し、縄文時代早期末から前期初頭の日本最古の埋葬犬骨であると結論づけた。また形態観察の結果、すでに報じられている縄文犬とほぼ同様の形質的特徴を備えていることも分かった。同研究室は、先月2日の第66回日本人類学会大会で研究成果を発表した。
「全身骨格の特徴も把握できる前期初頭以前の犬骨を発見できたことは縄文時代の犬の系統を解明する重要な手がかりになる」と同研究室の佐藤孝雄教授は言う。
縄文時代早期の犬骨には埋葬された状態で発見された資料がなく、またこれまで骨自体から年代測定を試みた前例もなかった。
2体の犬骨は、1962年に発掘されたが、調査終了後所在不明となっていた。それを昨年3月に同研究室が三田キャンパス考古学資料所蔵庫の一角から発見。その後東大、北大、聖マリアンナ医科大の研究者らの協力を受け、今回の研究成果を得た。
「家畜である犬の研究は、ひいてはその飼い主たる人間の研究にもつながる。今後は周辺地域の犬との形質的な比較、人骨の年代測定との比較などを通して、新たな研究につなげていきたい」と佐藤教授は話している。