6月15日 vs玉川大学 ○ 90—75
6月18日 vs専修大学 ○ 95—81
6月19日・準々決勝 vs東海大学 ● 63—84
6月20日・5〜8位決定戦 vs大東文化大学 ○ 87—72
6月21日・5位決定戦 vs法政大学 ○ 76—66
取材というものは意外とエネルギーを使う。バスケットの取材であれば、写真を撮りながら試合の流れをじっくりと読み、なおかつ選手の得点やファールの回数を書き留める。試合後は、選手にインタビューを行わなければならない。リーグ戦は土日だけなので平日に少しずつ休めばどうにか体力は持つものだが、一週間弱で毎日行われる大会の取材時は流石に堪える。
思えば、ここ最近はトーナメント、早慶戦、新人戦と3週続けて取材が続いた。早慶戦は一日のみの取材だが、トーナメントと新人戦は短期間で5試合程度が行われる大会。もはや、代々木は私の庭と言っても差し支えないかもしれない。どちらかと言えば出億劫な自分にとってはポジティブなことではあるが、やはり疲れる。取材の私がこの状態ならば、コートで走り続ける選手への負担はいかばかりか。少し導入が長くなった気がするが、今回の主題はここにある。
今年の春のシーズンの最後を締めくくる新人戦が終了し、慶大は5位に終わった。二ノ宮、酒井、岩下という1年次から主力として試合に出続けていた3 人を擁するチームにしては、少し物足りない結果だ。敗れた準々決勝の東海大戦は、その3本柱の一角の岩下が4Q開始早々に4つ目のファールを犯してから一方的な展開となった。良くも悪くも、現在のチームが岩下にどれだけ依存しているかが示されたのである。
しかし、トーナメント同様優勝が無くなってもチームの気持ちは切れなかった。点差は僅差になったが、以降の順位決定戦では連勝。大東大、法政大を相手に地力の差を示した格好となった。最も評価すべきは、春シーズンの過密日程の中で最低限の結果を出し続けたことだ。優勝を求められたが、佐々木ヘッドコーチも「結果は評価して良いと思う」と話すように、疲れのある状況を考えれば及第点は与えていい戦いぶりだった。早慶戦での激戦を経て、チームではモチベーション維持が難しい面があっただろう。慶大がトーナメントと新人戦でベスト8以上の結果を残し、なおかつ早慶戦でも勝利した例は過去15年以上遡らないと存在しない(※資料不足のため、正確な年次は不明)。5月末から続いた連戦での戦績は9勝2敗。リーグ戦のためにとっておきたい勝率である。いずれにせよ、秋の試合を戦い抜く上でチームにとって大きな自身になるのは間違いない。
新人戦開始当初心配されたのが主力3人とそれ以外、とりわけ1年生との連携だった。会場が代々木に移る前、すなわちベスト8入りを決めるまではこの点の不安が解消し切れなかった。しかし、最終日までには徐々に連携プレーも見られるようになった。1年生の中で、特に活躍が目立ったのは、スターターに名を連ねた原田と松谷。原田が、目立たないながらも繋ぎのプレーを堅実にこなせば、家治のケガでスタートに入った松谷が内外のオフェンスで頑張りを見せた。特に原田については、「自分追い込んだ経験が、全国大会の上位でしのぎを削ってきた松谷らに比べて乏しいから(育てていくのが)難しい」と佐々木HCは語るが、速攻の際に先頭を走るケースも見られ、おとなしい性格ながらも積極的にプレーに絡む姿が印象的だった。
一方でチームでの課題は、二ノ宮がベンチに下がった際のボール運び。基本的なことながら、控えガードの金子は「高校では自由にプレー出来ていたのが(高さの違いなどもあって成長が)停滞していて、カルチャーショックを受けている」段階にあり、個人プレーで精一杯。まだ、司令塔としてチームをコントロール出来るレベルではない。二ノ宮のサポートとしては、酒井がガードとしてボール運びを行う場面もあった。高校時代はポイントガードを行っていたこともあり、ユーティリティ性に長けている。本人は「佐々木先生からは『どのポジションでもお前をシックスマンとして使うから』と言われている」と話す。上級生を含めたチームでは出場機会が限定されており、葛藤もあるようだが「信頼されているから応えないといけない」と苦い表情は見せないところは、さすが闘将・酒井泰滋(06年度主将)の弟といったところだ。酒井はリバウンドでも頑張りを見せており、佐々木HCの要求に見事に応えている。ともあれ少し話が逸れたが、主将の鈴木らを含め、二ノ宮を助ける意味でフォワード陣のボール運びは今後の修正点である。
最後に、少し不自然に感じたことを記しておきたい。それは、慶應のサイズが全体的に大きくなることだった。5位決定戦で相手となった法政大に190 センチを越える選手がほとんどいなかったことなども、相対的にという意味で、その要因として挙げられよう。また、バスケットにおいては高さで相手を上回るのは重要なポイントであるから、むしろこれは歓迎すべきこととしても捉えることが出来る。
しかし、慶應のプレースタイルは、ミスマッチの中でもボールに飛び込み速攻を続けること。これについて佐々木HCは「機動力のある選手が動き回る2部のチームを秋に相手にすることを想定。それに慣れさせるために、岩下、原田、春本といったサイズのある選手を併用した」と話している。ただ、これで「慶應らしさ」が減速することにはならないだろうか。「らしさ」を貫いてこれまでプレーしてきた上級生らにとっては、不安の芽にならなければいいのだが……。
(2008年7月12日更新)
取材 羽原隆森、井上由衣、金武幸宏