2002年ノーベル物理学賞受賞の小柴昌俊氏による講演会が先月20日、日吉キャンパス独立館で開かれた。慶應あるびよんくらぶの主催。

演題は「宇宙、人間、素粒子」。小柴氏は自身が設計した観測装置「カミオカンデ」を使って、自然に発生したニュートリノの観測に世界で初めて成功。講演ではニュートリノが地球や人類の成り立ちにどうかかわっているかを解説した。また、ニュートリノなど素粒子の観測の仕組みも紹介した。

「人間が存在しているのはニュートリノのおかげ」。ニュートリノがなければ、鉄より重い元素は宇宙に存在できない。

周期表で鉄以前の元素は恒星内の核融合で作られるが、鉄より後の元素は星の最期である超新星爆発によってのみ作られる。星中心部の鉄の核が重力崩壊して起こるこの爆発に、ニュートリノが密接にかかわっているとした。地球ができた約46億年前の時点で、ニュートリノの働きによって、すべての元素は宇宙上に十分に存在していたため、人類は誕生した。

小柴氏 次世代の科学発展にエール

最後には、「次に新たな発見をして科学の発展に貢献していくのはあなたたちの世代だ」と若い世代に力強くエールを送った。小柴氏はノーベル賞の賞金等をもとに平成基礎科学財団を立ち上げ、研究支援、科学の啓蒙活動を若い世代向けに行なっている。