「∞プチプチ」をご存知だろうか。その名の通り、エアパッキン(プチプチ)を潰す快感を無限に味わうことが出来るキーチェーン型の玩具である。
この∞プチプチ、一体どういう構造なのか?発売元のバンダイは「押す部分にはいろいろな素材が検討されましたが、最終的には実際のプチプチの触り心地に近いシリコンラバーの2重構造にしました。また、押した時の硬さもできるだけ実際のものに近づけるため何度も調整を繰り返しました。硬さは人によって好みがあり、なかなか難しかったです」という。
社会人を中心とする幅広い層に大ヒットを記録しているこの商品。何故私たちはこんなにもプチプチ潰しに夢中になってしまうのだろうか。そして、∞プチプチのヒットは何を物語るのだろうか。
医学博士の米山公啓氏は∞プチプチと現代人のストレスの関係について、以下のように述べている。
「ストレス解消には、代償的な行為、それも快感を伴うことが必要である。たとえばプチプチ潰しの場合は、指先で何かを潰すという行為が、ある行為の完了を意味しているため、1つ潰すごとに非常に小さな達成感が生まれることになる」
また、人間がプチプチ潰しに夢中になっているとき、いわゆる快感物質であるドーパミンの分泌が視床下部付近で起きている可能性があり、指先から伝わる微妙な感覚が快感となっているために、人間はその行為を繰り返すというわけだ。これはコーヒーの一口が美味しいから、また一口飲む、という行為に近しい。
一般的に、ストレス解消には時間やお金がかかる。それゆえに、∞プチプチのような廉価で手軽な手段は選ばれやすい。経済的格差がひろがり、一部の人はストレス回避に金銭をかけられない—いわば快感格差社会である—ことも影響があるかもしれない。
近年では、子どもだけでなく、大人向けの玩具マーケティングが拡大している。バンダイによれば「現在親世代になっている方々が、自分も子どもの頃から、アニメやキャラクターに親しんで育ってきたという事が大きいと思います。大人をターゲットとしたものには『昔あこがれたものを手に入れたい』という欲求を満たすもの多いようです。
その他にも、『∞プチプチ』といった、ユニークで分かりやすい商品も人気があり、まとめ買いをするケースが多く見られます」とのこと。なるほど、∞プチプチを購入すること自体が、欲求の達成、ある種の快感に直結していると言える。
プチプチ潰しと現代人の密接な関係。どうやら∞プチプチは、現代社会の大人たちにとって、心の隙間を埋める手段として確かに有効であるようだ。
(谷田貝友貴)