大衆化で情報源はテレビ、ネット

学生が科学の最新知識を得る情報源の順位が「テレビ」「インターネット」「新聞」となり、インターネットと新聞の順番が逆転した。また、10年前には認知度が半分以下だった「メルトダウン」は大半の学生が知っている言葉となるなど、科学用語の認知度が大幅に上昇していることがわかった。理工学部の加藤万里子教授と法学部日吉物理教室の小林宏充教授が先月5日までに、大学生を対象に科学用語の知識と興味度、物理コンプレックスの有無などを調査し、まとめた。(二ノ宮暢)

情報源ネット 新聞を上回る

調査の対象は文・経・法・商の1、2年生および理工1年生。回収数は文系学部409、理工学部415。調査は日吉キャンパスで10年ごとに行われており、新入生の傾向を見るだけでなく、社会全体の科学への関心の推移を探ることができる。 「科学の最新知識をどの媒体で得るか」という調査では、最も多かったのはテレビ(文系67%、理系66%)で、次いでインターネット(文系57%、理系60%)となった。2002年と比較すると、新聞の割合が減少したと同時にインターネットの割合が増えた。

自然科学より身近に

また「科学用語36個について『聞いたことがあるか』『興味があるか』」という調査では、大幅に科学用語の認知率が上昇していることがわかった。過去2回と比較して、特に物理や宇宙関係の用語を知っている学生が増加。 小林教授は「『メルトダウン』や『ニュートリノ』などの科学用語が近年テレビや科学雑誌で大きく取り上げられるようになり、自然科学がより身近なものになった」と話す。ほかにも「ダークマター」や「カーボンナノチューブ」の認知度が大きく高まり、文系理系共に20%以上増えた。昨年3月に起きた原発事故の影響で「メルトダウン」の認知度が過去の調査と比較し大きく伸びた。 逆に認知度が落ちた用語もあり、1992年の調査では50%以上の認知度だった「高温超電導」「常温核融合」は2002年以降低下し続けている。

科学の大衆化で関心高まる

当初、同調査は90年代初頭のカリキュラム改革、いわゆる大綱化の前後で学生の自然科学への関心を比較しようと行われた。それから20年が経ち、科学の大衆化が起きていると小林教授は分析している。純粋な科学的興味にとどまらす、周辺領域まで興味が広がっているとし、一般社会でも科学への関心の高まりが見られると推測した。

文系でも実験慶應だけ

文系学生でも自然科学を学ぶと、社会科学の学習に好影響があるという。「福澤諭吉は、実験をすると同じような結果が得られる自然科学を通して論理性を養った後に社会科学を学ぶと、より論理的に学べると説いていた。文系の学生でも自然科学の科目を、実験を交えながら履修できるのは慶應だけ。科学に関心を持つ学生は是非履修して、論理的思考を養ってほしい」