この秋、穀物価格が高騰した影響で小麦やバター、食用油が相次いで値上げされている。引き金は世界的な異常気象である。例えば6月以降、世界最大の穀物輸出国である米国中西部の穀倉地帯を熱波が直撃したことで、トウモロコシや大豆の成長に大きな打撃を与えた。
もともとここ数年、中国を中心とした新興国の食料需要の拡大、バイオエタノール推進などの穀物をめぐる構造変化によって穀物価格は上昇傾向にあったこともあり、今回の熱波が価格高騰に拍車をかけたといえる。
このように世で騒がれている「値上げ」であるが、実際私たちの生活はその影響を受けているのだろうか。塾生に身近な「生協」を取材した。 慶應義塾生活協同組合によると、意外にも「現時点では生協の商品で値上げやその予定はない」との答えが返ってきた。というのも、穀物など原材料の価格変動が、実際の商品価格に影響するまでには半年から1年かかる。したがって、生協の商品がこの秋の穀物高の影響を受けるかは、生協の上半期が始まる来年の3月以降でなければ分からないという。
しかし生協では以前、小麦価格の上昇にともない麺類の価格を引き上げた事例もあるそうだ。価格高騰に関する報道が多い今だけでなく、今後の動向に注目していく必要がある。 多くの食糧を輸入に頼る日本で暮らす私たちは、遠い海の向こうの異常気象にさえ、大きく翻弄されてしまう。今回の価格高騰の背景から、食糧自給率の低い日本の弱みを垣間見た。 (吉田遥)