討論の前提は「相手」の理解
先日、世界制覇を果たした慶應義塾討論会(KDS)。KDSは日本で最高峰のディベートサークルである。しかし英語ディベート自体、日本ではあまり世間に知られていない。そこで今回は、英語ディベートとはなにか、その本質を探ってみたい。
ディベートとは肯定側、否定側に分かれ論理力を競うものである。それぞれ持ち時間が決められており、時間内に自分の言いたい事をまとめ、相手に対して反駁をしつつ、勝つ弁論を組む。
英語ディベートは概括すると大きく二つに分けられる。一つがイギリスの議会制度をモデルとしたパーラメンタリーディベート(通称パーラー)。ディベーターは直前まで論題を知らされず、論題発表から15分という短い時間で弁論を準備しなくてはならない。そのため、多岐に渡る知識、即興性が求められるのが特徴である。多くの国がこのスタイルを導入していることから、海外からディベーターを日本にコーチとして招くなど、海外との交流も盛んだ。毎年アジア大会、世界大会も開かれ、KDSからは毎年複数の国際大会への派遣が行われている。
もう一つがアメリカの司法裁判制度をモデルとしたアカデミック・ディベート(NDT)。こちらは予め論題が決められており、弁論の際に証拠資料の提出が義務付けられる。半年間のシーズンを通して論題が固定されることで、より論理性が重視され、ディベーターは一つのトピックをより深く掘り下げた知見を得ることができる。ここ数年間では、安全保障、刑罰、金融、環境などの政策が取り上げられた。
KDSはパーラー、NDT共に日本でもトップクラス。KDS代表の橋本美貴男さん(経2)にディベートについて話を伺ったところ「世界的にはディベートは有名だが、日本のディベートの人口はまだ少ない。パーラーを例に取ると、大学数は慶大、東大、ICUなど40校ほど。人口の少なさは、認知されてない部分が大きい。これからもディベートの普及と、日本を引っ張っていけるようなディベーターの育成をしていきたい」と語った。
寒さも厳しくなり、大学受験のシーズンを迎えたが、受験の際に勉強する英語をさらに磨く場は何も大学の授業だけではない。より高い自己を目指し切磋琢磨する塾生を見るにつれ、将来日本を引っ張る力の躍動を感じる。ディベートの本質とは肯定側、否定側どちらの側も経験することで、相手の立場を理解できるようになることではないか。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」である。今後も塾生から日本を引っ張る強いディベーターが生まれることを願ってやまない。
(遠藤和希)