学年がまた一つ上がり、学内には新入生があふれる季節がやってきた。日吉と藤沢の両キャンパスは、まだ慣れない大学生活に翻弄される新入生とサークル勧誘の上級生によって、しばらく賑わいを絶やさないだろう

▼入学式といえば、今も昔も桜が満開の季節という印象が強いのは日本人にとって共通のものではないだろうか。今年の冬は例年に比べて冷え込みが強く、桜の開花が遅れるのではないかと思われたが、2月下旬と3月上旬に温暖な日が続いたため、結局例年通りの開花となった

▼「敷島の/大和心を/人問はば/朝日に匂ふ/山桜花」。本居宣長は江戸時代にこのような歌を詠んだ。桜と日本人の心について詠まれた最も代表的な歌と言えるだろう。平安時代から宮中には「左近の桜」が植えられているように、古くから桜は日本人の象徴的な存在であり続けている。やはり、美しいだけでなく、満開を過ぎるとはかなく散っていくその姿に、日本人の誰もが心惹かれるのだろう

▼桜と入学式。満開の桜から日本人の心を捉え直すとともに、自らが新入生であった当時の初心を思い起こし、改めて今年度も新たな勉学に励みたいと思う今日この頃である。

(渡邊弘樹)