5月に慶大で、NBS日本速読教育連盟や東京大学との共同研究において速読法(朴-佐々木メソッド)の熟達者が現代語小説を高速で理解して読んでいる事例を示した、という趣旨の論文が発表された。しかし、速読法がどんなものかよくわからない人も多いのではないだろうか。そこで今回は前述の研究に携わったNBS日本速読教育連盟理事長佐々木豊文博士、および慶大大学院社会学研究科皆川泰代特任准教授のお二人に速読法に関してのお話を伺った。

まずそもそも速読法と一口にいってもいろいろなものがあるが、ここでいう速読法とは、飛ばし読み、すくい読みとは異なる。読んで字のごとく文章全体を読む速度を上げる方法のことをいうのだ。

普通の読書では、文章を読み取ること、それを頭の中で音声化すること、その内容を理解すること、というプロセスをすべて一度にごちゃまぜにしてやっているが、これらの作業を分解して、個別に訓練していくことで速読することが可能になるという。まず目を鍛えて文字を高速で読み取ることができるようにし、次いで目で追った内容を高速で理解できるようにするとのことだ。

速読法に熟練すると、もちろん文章を読むのが早くなって、読書やデスクワークがはかどるという直接的な効用がある。さらに、その他にもあらゆる場面で効用が実感できるという。効用の例についてお聞きしたところ、佐々木博士があらゆるところで、と断ったうえで初めに例として挙げたのは、意外にもスポーツ。目を訓練することで視野が広がり、それが好結果をもたらすとのこと。実際にプロ野球の細川亨選手は、佐々木博士の速読法教室に通い成果を上げているという。その他車の運転など日常生活や、数学や語学等学問などでもその効用が実感できるそうだ。これは速読法が文を早く読むことを目的としつつも、その訓練の過程で目の力や集中力、直観力などの向上を要していることによる。

では、どのようにして速読法の訓練をしていくか。それについては、目的に応じて市販の速読法に関する書物を見極めて選択しその内容を実践してみること、さらにつっこみたいなら速読法の教室に通うのが一番だという。本格的にやるなら、独習はなかなか難しく、インストラクターを要するようだ。     (佐野広大)