経済学部准教授 デビット・ノッター氏

少子化、晩婚化が顕著となった現代日本を生きていく若者たち。一方で、多くの若者が常に身近に感じている恋愛とは一体何なのか。ロマンティック・ラブ・イデオロギーの日米比較研究をしてきた社会学者である経済学部准教授、デビッド・ノッタ―氏に歴史的観点からお話を伺った。

 

恋愛には感情的側面と、文化的側面がある。前者は本能的に恋愛の相手を求める性愛など。後者は時代や場所に関係なく人は恋愛をするが、その形が文化によって異なっていることをいう。日本における恋愛はどのように定着していったのか。

まず明治時代に、江戸時代にはなかった恋愛観が日本に輸入される。その恋愛観こそが、ロマンティック・ラブ。当時、欧米に普及していた性愛の特殊な形態で、結婚を前提とする純愛のことだ。

大正時代に入ると、人間の最高の価値を恋愛とする恋愛至上主義が確立し、愛情と信頼で成り立つ近代家族が生まれる。そして戦後、恋愛結婚や近代家族が一般的になる。




そして現代。欧米ではロマンティック・ラブという恋愛形態が揺らぎ、純愛は過去のものとなった。アメリカでは夫婦のおよそ2組に1組が離婚している。

日本では、恋人などの存在によって結婚なしでも生活に満足できる。しかし、子どもをつくらなければならないというプレッシャーや親の期待は未だに残り、現在は恋愛の捉え方について悩む時代になっている。さらに、「現在、多くの若者は1人の相手と長くつきあうことに興味がないように思う。これからは、コミュニケーション能力が重要になる時代がやってくるはずだ」ともノッタ―氏は語った。

現在、日本における恋愛観は不安定だ。これからを生きていく若者として、自らの恋愛観に対する答えを見つけてほしい。

 

(井上絵梨)

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デビット・ノッター氏

経済学部准教授。専門は歴史社会学。1986年にオべリン大学卒業後、京都大学大学院教育学研究科に進み博士課程修了。経済学部の大学専任講師を経て、2005年から現職。代表的著書に『純潔の近代:近代家族と親密性の比較社会学』(慶應義塾大学出版社、2007年)。