清家篤塾長が参加する、旧帝大系7大学と早大・慶大・筑波大・東工大で構成される学術研究懇談会(RU11)は5月22日、「我が国のサスティナブル(持続可能)な成長に貢献するRU11(提言)」を発表した。日本における最先端の研究・人材育成を担う大学として、限りある人材と財政的資源を効果的に活用することを狙う。              (川井田慧美)

「我が国のサスティナブル(持続可能)な成長に貢献するRU11(提言)」を発表した背景には、日本の持続可能な成長を支えるために、学術の発展が不可欠であるという考えがある。 世界的な学術界での激しい競争に参画しているRU11各校は、最先端の研究・人材育成の役割を担う責任を負うという。その上で、世界的な学術競争の中での日本の遅れを強調している。 バブル崩壊後の空白の20年間で、他の先進国が科学技術開発や高等教育へ投資を増大している中、日本は停滞した。

日本の公的研究費は米国の約3割(連邦政府研究費配分額上位11大学とRU11構成大学の比較)となっている。基盤的経費の断続的な減少が、大学の国際競争力の低下を招き、人材育成機能の充実を妨げているとし、同提言の発表に至った。

ポストドクターなど若手研究者のキャリアパス、有期雇用の期間制限などを「学術の根本にかかわる問題」とし、持続可能な仕組みへの転換を求めた。

同提言は有限の人的・財政的資源の効率的な活用も掲げている。具体的には、年度の壁を研究者が気にすることなく効率的に研究費を使用することができるように科学研究費の早期・完全基金化を目指すという。また、RU11を筆頭に日本の総合大学は優秀な若手研究者、技術者の育成と輩出に重点を置くべきだとしている。

また、RU11は博士号を取得した日本のポストドクターが、アカデミアのみならず産業界や行政界でも活躍できる幅広いキャリアパスを形成できるよう啓発活動を行なっている。

「世界標準では、骨太の専門を持って周辺を柔軟にふかんできる博士人材が、社会活動の全分野で活躍し、新しい文明を開拓してゆく時代が来ている」と慶大常任理事真壁利明氏は話す。同時に「多様な世代が人生の節目で大学に学び、自分の人生を豊かにすることが成熟した社会」とした。

慶大の特色は、実学(サイエンス)を重視する点。慶大は設立当初から科学に基づいた学問を追及する姿勢を保ち、新しい時代の先導者を生んできた。特定の分野に偏ることなく、文理融合を志向する点でも、慶大がRU11で果たす役割は大きいという。