映画を観に行く場所として、どんなものを思い浮かべるだろうか。たいていの人が館内に10数個のスクリーンがあり、最新の映画を上映する「シネマコンプレックス」、いわゆる「シネコン」と呼ばれるものを想像するのではないだろうか。

しかしそんなシネマコンプレックスが多い中、一つのスクリーンで2本立ての上映を行う「名画座」と呼ばれる劇場がある。今回はそんな名画座の魅力を紹介したい。

名画座は同じ監督、同じジャンルなど関連のある2作品を一つのスクリーンに上映する。映画は一週間ごとに替わり、学生なら1000―1500円程度で2本の映画を観ることができる。安さと、週替わりでさまざまな種類の映画を選ぶことができる点は、シネコンとの大きな違いである。

実際に名画座を利用している塾生に、その楽しみ方について話を聞いてみた。「都内に名画座は多くあって、安さと交通の便の良さが魅力で通い始めました。利用は月に1―2回。Twitterで名画座のアカウントからの情報を得て、気になったら足を運んでいます」

シネコンとの使い分けについては、「シネコンで新作を観るのは友達とのイベント。一方名画座は、どちらかというと読書のように、映画を一人味わいながら観たい時に利用します」とのこと。同じ映画館でも、足を運ぶ際の気持ちは異なっているという。

また、名画座を運営する側から見た学生の名画座利用についても聞いてみた。お話をしてくださったのは、大森駅にあるキネカ大森の支配人長島理恵子さん。長島さんは、学生の利用者はそう多くない、と話す。「今は少し待てばDVDで観ることができてしまいますから、わざわざ映画館へ、とはなかなか足がむかないのかもしれませんね(苦笑)」

長島さんは、映画館での2時間は『自分を突き放す』時間だという。「大きなスクリーンを皆で見上げて、暗闇で今自分がいる現実とは違う映画の世界に浸ってみる。毎日の中で嫌なことがあっても、その2時間でリフレッシュができる」

名画座の魅力は、「新たな発見」と「広がりが生まれる」ことだという。「名画座で上映する映画は最新の作品ではありません。でも最新作を観て面白いと思った監督の前の作品が名画座で上映していたら、観に来てほしい。最新作に至るまでの軌跡がそこにはあるし、最新作につながる新しい発見があると思います」とのこと。最新作だけでは見えてこない、数本の映画を通しての発見が広がりを生むという。

キネカ大森には劇場のロビーに映画のパンフレットが置いてある。映画を観終えた後パンフレットを自由に閲覧することができるようになっており、それを眺めているだけでも楽しい。

「最新作から興味を持って名画座へ足を運んで、また来たいな、と思ってもらえたら嬉しいです。」

最後に、今しかない感性を大切にしてほしいと長島さんは語る。「学生さんの年齢だからこその発見や、感性に響くものが古い映画の中にはあると思います。誰かに話したくなるような映画、心にしまっておきたい映画を、たくさん観て、映画からさまざまなものを柔軟に吸収してほしい。」

授業、課題、アルバイトにサークル。大学生の生活は、思った以上にせわしない。しかし同時に、自由に使える時間も高校の頃より増える。シネコンとはまた違った魅力のある名画座に、一度足を運んでみてはいかがだろうか。

(梅山紗季)