安西祐一郎先生ご退職記念講演会が先月20日、日吉キャンパス協生館2階藤原洋記念ホールにて開かれた。安西祐一郎理工学部教授は、平成13ー21年までの2期8年にわたり慶大塾長を務め、昨年9月に退職した。現在は日本学術振興会理事長及び慶應義塾学事顧問を務める。
演題は、「教育研究の未来と独立自尊の精神」。講演の初めに語ったのは、昨年3月の東日本大震災で廃墟になった宮城県石巻市の大川小学校跡地に立った時に感じた、教育の在り方や学問の世界への思い。「生きながらえた子供たちにどんな教育をするのか、どんな学びを経験させるのか」
「教育」、「発達」といった言葉をキーワードにしながら、講演は安西教授の専門分野である認知科学の内容にまで及んだ。認知科学は人間の心のはたらきに関わる現象を「情報」の概念のもとに理解する学問であり、「情報の概念について特に慶應で厳密に、数理的に学んだことががバックグラウンドとなっている」とした。認知科学の、人間の心にまつわる広範囲の研究成果が紹介された。
講演の最後に、福澤諭吉先生の1896年11月1日の演説、「慶應義塾の目的」の言葉を引用した。「慶應義塾の目的は日本国中において気品の泉源、智徳の模範になることを志し、このことを実際に居家処世立国の本旨を明らかにして、身をもって実際に行うことで社会の先導者であろうとしてほしい」。日本に住む一人一人がこのような意識をもって、日本の再生をしていかなければならないと締めくくった。
本講演の録画は(http://www.ustream.tv/recorded/19879370)で視聴可能。