受験シーズンも後半戦となり、塾生が期末試験を終える2月。手元に使わなくなった教科書はないだろうか。
「勉強したいと思うすべての子どもたちが勉強できる世界に」。そんな理念のもと、2010年春に設立された学生起業団体がある。STUDY FOR TWO(以下SFT)だ。約20の大学支部ごとに活動を展開している。
SFTは学生から使い終えた教科書を回収し、必要としている学生に安価で販売。その収益の約8割を、NGOを通じて発展途上国の子どもたちの奨学金として寄付している。
教科書の回収は無償ではなく、提供者の名刺作成や企業が協賛する福引の参加券といった別の対価や機会を設けている。回収された教科書は各大学での露店販売や、通販サイトのamazonを通じたネット販売で購入できる。
「大学1年のときにふと参加したラオスでのボランティア活動が設立のきっかけとなりました」。早稲田大学政治経済学部3年に在籍する代表の石橋孝太郎さんはこう語る。「私は奨学金を借り入れて大学に通っています。同じ『お金がない』状況でも勉強できている自分と、勉強できない現地で出会った子どもたち。何が違うのかを考えましたが、その答えは出ませんでした」。
帰国後、まとまった金額が必要になる教科書購入の時期に、石橋さんはひらめいたという。「日本の学生が簡単に安く教科書を手に入れられる環境を作ればいい。そこからでた収益で、勉強したくても金銭的な理由でできない子どもたちを少しでも支えられたら」
慶大支部は昨年5月に発足。活動開始から約150冊を回収している。昨年10月に早大、明大支部と「SFTガチャ」企画という福引企画を行った。
回収はイベントを開催することもあれば大学の文化祭などで行うこともある。各支部に直接連絡を取れば一年中、また直接届けることができない場合でも郵送で受け付けている。教科書に書き込みがあっても構わないという。
「購入された方には感謝されることが多いです。また団体の活動に共感した学生が新たに参加してくれることもあります」
SFTは現在、立命館大学や九州大学など新たに5大学に支部を設立。今後は地方ごとに運営事務局を作るといった全国的な活動を視野に入れている。
石橋さんは「勉強をしたくてもできない子どもたちが少しでもいなくなること、安価な教科書が当たり前になること。この2点の達成を目標にしています。教科書の売り上げを向上させると共に、新しい事業アイディアを模索し、描く夢を達成したいです」とさらなる事業拡大についても語った。
手元に残った教科書で、彼らと一緒に少しだけ世界を変えてみてはいかがだろう。
(小原鈴夏)