先月30日に三田キャンパス三田演説館で第693回三田演説会が開催された。今回は「日本の対外言語戦略について~言語力こそ日本を守る『武器』だ~」と題し、慶應義塾大学名誉教授である鈴木孝夫教授が熱弁をふるった。

鈴木教授は、超大国に必要な3つの柱は経済技術力と強大な軍事力、そして広大な地域を支配する言語力であると話した後、日本にとっては言語力の強化が国家としての安定に必要だと主張した。言語力の強化に関して、鈴木教授は2つの政策を提案した。

1つ目は学校教育での外国語教育の徹底的な見直し。鈴木教授は欧米諸言語を履修する学生が多い現状に対して、「大学で学ぶべき外国語はロシア語、アラビア語、中国語、韓国語など国際外交に必要とされる言語だ」と主張。関連して、北方領土問題で外交的重要性のある隣国であるロシアの言語を習得する学生の少なさについて警鐘を鳴らした。

2つ目は、日本語の国際普及を図る具体策。未だに欧米諸国に羨望を抱く風潮があることを指摘しつつ、「日本は他国から祖国を略奪された経験が無い唯一の国。それゆえ他国を理想化することができ、他国の良いところを取り入れてきた。だからこそ日本は世界平和を主張するべき立場にある。しがらみの多いヨーロッパや軍事力で物事を解決しようとするアメリカには出来ないことだ」と鈴木教授は語った。

その上で、自国の言語で発言することの重要性に触れ、「日本語による自己開示や意見表明が出来る状況を作り出す努力をするべき」と主張。そのためには日本語を国連の公用語とする運動を官民一体となって行う必要があると話した。