坪田一男・慶大教授(眼科)をはじめとする慶應大学眼科の研究チームは、両国眼科の石岡みさき医師らと共に水道水などの消毒に使われる塩素が角膜を傷つけ、目に悪影響を及ぼすことを実験で明らかにし、米国の眼科学専門誌に発表した。

 実験は「(1)体液と浸透圧が同じ生理食塩水(生食)(2)水道水(3)生食に塩素を加えたもの」でそれぞれ50秒間ずつ目を洗って角膜の状態などを調べるという方法で、体調の良好な男女10人の被験者に対して実施した。

 その結果、いずれの実験液でも、目を洗う前に比べて角膜上皮の傷が増えたが、塩素入り生食の場合の傷の増加が特に顕著だったという。また、目を保護する粘液の成分が、水道水と塩素入り生食で洗眼したときに減少し、生食の時のみ減らなかった。さらに、「色素の透過量で角膜上皮のバリアー機能を調べる検査」では、塩素入り生食の場合のみバリアー機能の低下が確認されたという。

 これらの結果を踏まえて、研究チームは塩素が目に悪影響を与える主な原因と結論付け、現在日本の学校などで習慣となっている水泳後の洗眼は目に悪影響を及ぼすとして、ゴーグルでの保護を訴えている。今後研究が進んでいく上で、水泳後の洗眼を推奨している行政の対応に注目が集まりそうだ。