3年生の就職活動もいよいよ本番。大企業に就職することに固執し「都会で生きる」将来を当然のものとして受け入れている塾生も多いのではないだろうか。しかし、自らの夢や理想のライフスタイルを追い求めるために、あえて「地域で活きる」。そんな選択肢があってもいいはずだ。この連載ではさまざまな角度から「地域で活きる」ことの魅力や可能性を見つめ直していきたい。
(竹田あずさ)
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第1回目は地方自治体の首長の視点から、浜松市市長の鈴木康友氏にお話を伺った。鈴木氏は慶大法学部政治学科卒業後、松下政経塾に第1期生として入塾。衆議院議員を経て、現在は市政100年を迎えた政令指定都市、浜松市の市長を務めている。
「私自身、地方から出ていって東京という地にしがみついていた時期もあった」と鈴木氏は若かりし日を振り返える。しかし、時代は大きく変わった。「日本は東京一極集中、中央集権的なやり方では行き詰ってしまう」と彼は語る。人々の生き方を考える上でも、政治や行政の機能が地方分権することと同じくらいに、地方を元気にすることが重要だという。
これを実現するには、やってみようという意味である浜松地方の方言、「やらまいか」精神を持つ若者が必要だと彼は言う。「Uターンだけでなく、Iターンも大歓迎。地元の人も温かく迎え入れます」
働く場所は地方にも十分ある。「東京の企業と遜色ない、世界に通用する大企業もある。地場産業として優れた技術を持つ中小企業もあるし、自ら起業する若手実業家もいる」と、地方で働くことの可能性をもっと認識して欲しいと訴える。
また、田舎は不便だと思う人も少なくないだろうが、多くの地方都市は基本的な都市機能が整っている。むしろ過密でない分、通勤ラッシュなど都会特有の息苦しさやストレスを感じることがなく快適だという。以前に比べれば交通網も発達した。「必要な時だけ東京に行けばいい。でも暮らしてみると、東京にしかないものって案外あまり無いのだと気付きますよ」
地域の人々との温かい触れ合いや、自然に親しむことができるのも地域で生きることの醍醐味の一つだ。「仕事だけでなく日々の生活や休日の過ごし方などをトータルすると、地域で生きることの良さが見えてくるはず。東京でなくてはいけないというステレオタイプの発想から抜け出して、自分が本当に活躍できる場所を見つけてほしい」とメッセージをいただいた。