自然科学研究教育センター主催の講演会が、先月11日に日吉キャンパス来往舎1階シンポジウムスペースで行われた。
本センター主催による講演会は、多分野にまたがる自然科学に対する理解を深めることを目的として行われ、今回で11回目となる。講師に独立行政法人海洋研究開発機構海洋・極限環境生物圏領域長の北里洋氏を迎え、「深海:生物多様性のゆりかご」をテーマに講演が行われた。
北里氏は世界の海で確認されている23万種の生物のうち、14・6%の生物が日本近海に生息していることを紹介。日本近海は深海生物の宝庫であることを強調し、日本の複雑な地形と、深海生物のさまざまな環境に対する適応を理由にあげて解説した。
深海とは、海面下200メートル以下の海を指す。暗黒で高圧である過酷な深海の環境において、光が少ないため目を退化させる、雌に雄が合体して確実に繁殖する、発光器を持つなどして生物は適応してきたと北里氏は説明した。
また、深海のクラゲが他の生物の生息地になり、クラゲ自身も巻き貝に子供を産み、巻き貝をゆりかごとすることを紹介。1万6000以上の生物のつながりが存在すると解説した。
「深海生物は地球の環境変動に反応する」と北里氏は話し、油田事故や鉱物資源採取などの人間活動で海は汚れ、生物の中に人工物質が蓄積されることを説明。「深海生物の研究はまだほんの一部しか進んでいない。私たちが海のことを考えているかどうかが重要だ」と述べた。