朝鮮半島研究の第一人者である法学部の小此木政夫教授が、今年度で定年退職を迎える。1月18日には三田キャンパスで、「私の韓国朝鮮研究40年」をテーマに最終講義を行った。
この講義には、国分良成法学部長を始めとする政治学科の教授陣や小此木ゼミのOB・OGも出席。朝日新聞や韓国の大手メディア数社が取材に駆けつけた。
弊紙は最終講義を終えた小此木教授にインタビューを行い、長年の研究生活や慶大での教授生活を振り返って頂いた。
最終講義を終えて、今の心境は如何ですか
地域研究を専攻している学者は、自分の研究対象に特別な愛着がある。研究生活を振り返った今回の講義は、私自身にとっても感慨深いものがあった。
ゼミの教え子の中には、会社を抜け出して講義を聴きに来てくれた人もいて大変嬉しかった。
朝鮮半島研究に進まれたきっかけは何ですか
学生時代からアジアに対する関心が強く、中国研究者であった故石川忠雄氏のゼミに入った。今思うと、先進国への反発心もあったのかもしれない。
また、私の家庭は決して裕福ではなかったので、金銭的に負担の少ない学問をやりたかった。現代アジア研究は、欧米に比べて使用する文献が高価ではないので好都合だと思った。
1972年から二年間、韓国の延世大に留学されています。慶應から派遣された留学生は先生が初めてでした。戸惑いや不安はありましたか。
もちろんあった。軍事政権下の韓国に留学することが危険視される時代だった。しかし実際に行ってみると、みんなが親切で助かった。
韓国語は現地で一から学んだ。国際化していなかった韓国では英語がほとんど通じなかったので、韓国語を片言で話せるようになるまでの数か月が
辛かった。
最初に慶大の教壇に立ったのは、1975年のことでした。講義の雰囲気は如何でしたか
金大中拉致事件などの影響もあり、日本人の韓国に対する反感が強かった。その上、現代朝鮮論を教えている授業など他にはなかったので、訝しげな目で私を見る者も少なくなかったような気がする。
今後の予定は何ですか
最近10年~20年はメディアの取材に追われたり、大学行政に関わったりしていたので、思うように研究ができなかった。残された時間はもう一度、学者として研究に専念したい。
ただ、私が創設に携わった東アジア研究所の現代韓国研究センターには責任がある。今後もボランティア的に支援していきたいと考えている。
最後に塾生に向けて一言お願いします
今の塾生は、昔に比べてガツガツしてないような印象を受ける。勉強に限らず、もっと何か一つのことを極めようという貪欲さを持って欲しい。
また、留学志望者が減少しているとすれば大変残念。もっと積極的に海外経験を積んで欲しい。
ありがとうございました
(横山太一)