東京の夜を照らす東京タワー。慶大三田キャンパスへの道中でも姿を見ることができる。実はそのライトアップには、さまざまな種類があることをご存知だろうか。広報課の田中氏に歴史と思いを聞いた。

 

  • 東京タワーには2種類のライトアップ

現在の東京タワーのライトアップは「ランドマークライト」と「インフィニティ・ダイヤモンドヴェ―ル」の2種類だ。令和元年である2019年に開始された。

ランドマークライトのこだわりは、ライトの色。夏と冬で使われているライトの種類が異なっている。7月初旬からの夏バージョンでは、メタルハライドランプと呼ばれるシルバーライトを使用し、涼しげなイメージを与えている。一方、10月初旬から始まる冬バージョンでは、高圧ナトリウムランプを使用し、温かみのあるオレンジ色のライトアップとなっている。

もう一つのインフィニティ・ダイヤモンドヴェールは、月・木曜日に点灯するライトアップだ。開業50周年に始まった「ダイヤモンドヴェール」から進化し、無限に色を表現できるようになったことから名付けられた。使われているLEDライトの数は268台。照明デザイナーとともに決定した月毎のカラーが輝く。

下から見上げる夜の東京タワー【写真=提供】
  • 「日本的なライトアップ」を目指す

東京タワーの本格的なライトアップは、昭和64年の元日から始まった。開業当時から照明はついていたものの、30周年を機に「何か新しいことを」と、当時社長であった前田福三郎氏が発案した。

照明のデザインは石井幹子氏が担当。力を入れたのは、「日本的なライトアップをつくる」こと。四季の移ろいに敏感な日本人の感性にはまるように、夏と冬で異なるライトアップを提案した。この精神は、現在のランドマークライトにも引き継がれている。

 

  • ライトアップを通して伝えるメッセージ

東京タワーでは、基本のライトアップ以外にも、月に数回特別ライトアップを実施している。

中秋の名月には、タワーの上部と足元を消灯したライトアップが行われた。『名月の光との共存』をテーマに、月の光をより楽しめるようにとの想いが込められている。他にも、桜開花宣言日の桜色のライトアップなど、四季を感じるライトアップが行われている。

また、ライトアップを通した社会活動にも力を入れている。今年10月には、乳がんキャンペーンを実施しているELCジャパンと協働し、ピンク色のライトアップを行った。シンボルであるピンクリボンを意識したライトアップにより、「美しい絆で、乳がんのない世界へ」のメッセージを発信した。

 

ピンクリボンと連動したライトアップ【写真=提供】

 

取材の最後に慶大生にメッセージを求めると、「近すぎて展望台には行く機会が…という方も多いと思います。ただ、展望台から見える三田通りは『もう1つの東京タワー』と言われており、人気の夜景です。是非一度ご覧ください」と語った。

 

上っても外からでも楽しめる東京タワー。その輝きには、東京のシンボルとしての誇りと、日本の心を大切にする思いを感じる。田中氏のおすすめは芝公園からの東京タワー。この機会に、改めて観光してみてはいかがだろうか。

 

藪優果