昨年比4ポイント増

法務省司法試験委員会は今月9日、法科大学院修了者を対象とする2010年新司法試験の合格者を発表した。慶大の合格率は約50・4%で、法科大学院別で1位。合格者数は179人で、東大、中央大に次いで3位。慶大では合格率、合格者数ともに昨年を上回る結果となった。全国の合格率は25・4%で、合格者数は2074人であった。    (陶川紗貴子)



慶大では合格率は昨年比約4㌽増加、合格者数は32人増加した。
法務研究科委員長の伊東研祐教授は慶大の合格率と合格者数増加の要因について「今回の新司法試験は昨年度以前の修了生も受験したが、今年度修了生のうち既修者の合格率は約63・2%で、未修者の合格率は約46・2%。未修者を中心とする今年度修了生が大変よく頑張ったことが結果につながった」と説明している。
全国では合格者数は昨年より31人多かったものの、合格率は約2・2㌽低下し、昨年に引き続き過去最低を更新した。政府は法曹人口拡大のため、今年までに合格者を年3000人に増やす方針を示していたが、達成には至らなかった。
法科大学院は法学部出身者が多数を占める「既修者コース」と法学部以外の学部出身者や社会人が多い「未修者コース」に分かれている。全国の合格率は、既修者コースが37・0%であるのに対し、未修者コースは17・3%。新制度の開始以来の問題である各コース間の格差は依然残っている。
慶大においては、今回の受験者のうち既修者の合格率は約55・6%で6位、未修者の合格率は39・3%で1位。
伊東教授は「未修者たちは緊張感を持ち自ら勉強しようとする意志が強かった。加えて彼ら自身も教授陣も、卒業までに確実な知識量を養うためにどう取り組めばよいかをつかめてきた」と話す。
慶大では、文部科学省の中央教育審議会が学生の質を維持するために各法科大学院に定員見直しを求めていることを背景に、来年度入学定員を30人削減する。一クラスの人数は従来の既修者45人、未修者40人からともに35人となる。伊東教授は「学生と教授の接触を今以上に増やし、丁寧な教育を行っていきたい。外部に指摘されたからやるというのではなく、きちんとしたポリシーを持って運営していくつもり」と話す。さらに今後について「不合格となった学生なども、精神面だけではなく物理的な面でもサポートしていきたいので、塾当局の協力もお願いしたい」と語った。
新司法試験は2006年より始まり今年で5回目。昨年は参加した法科大学院全74校すべてで合格者が出たが、今年は2校で合格者が0人となった。