昨年11月11日に日吉キャンパスで業界講演会が開催された。全塾ゼミナール委員会が主催し今回で27回目となった業界講演会には、就職活動や研究活動に役立てようと、多くの塾生が参加した。
塾生新聞は、日本政策投資銀行と日本航空の講演をそれぞれ取材した。
日本政策投資銀行
日本政策投資銀行(以下、DBJ)からは、2018年入行の小泉氏と2020年入行の浦野氏(ともに法学部法律学科卒)が登壇した。
金融は企業・経済・社会の血流とよく言われ、金融は「余剰資金を資金需要のある所に融通する社会の仕組みそのもの」である。
政府系金融機関は、短期的には利益が見にくかったり、リスクが大きかったりといった理由で民間の金融機関が手を出しにくいテーマに対し、社会的・長期的利益の実現に向けたファイナンスソリューションを提供している。講演内では宇宙産業などが例に挙げられた。
政府系金融機関の一つであるDBJはアドバイザリー/コンサルティング・投資・融資・アセットマネジメントを掛け合わせ、金融業界を超えた幅広いビジネスを展開している。「特定の企業グループにとらわれず、中立的な立場で顧客や日本の経済社会にとっての最適解を考えることを軸にしており、中立的な立場から支援するからこそ信頼され、多数のプロジェクトを実現できる」と浦野氏は語る。浦野氏はプロジェクトについて、「あなたなら、100億円を使って社会にどう貢献しますか?」という問いを学生に投げかけ、政府系金融機関なら実際にどのように貢献するのかを提示した。例えば不動産分野では東京スカイツリー、インフラでは再生可能エネルギーを取り上げ、具体的にどのように企業と協働し資金調達を行ったかを示した。また、海外をフィールドにした業務では、世界の最先端技術を日本社会に還元する一方で、国内では地域の産業を俯瞰し自立・成長を支援している事例を挙げた。
社会を俯瞰して課題と向き合い、金融というツールを使って解決まで導くことが政府系金融機関の特徴であり、一言でいうと「金融力で未来をデザインする」機関である。
最後に学生らに対して一言求められると、浦野氏は「学生でしかできないことをやる。学生生活をやり切ってみるのがいい」と答え、小泉氏は「就活を意識しすぎずに今打ち込んでいることをやる。打ち込んだからこそ得られるものがある」と回答し、塾生にエールを送った。
日本航空
航空業界の講演では、日本航空株式会社から蜂屋氏(法学部法律学科卒)、國友氏(商学部卒)と毎熊氏(法学部政治学科卒)の3名が登壇した。自己紹介では、堅い雰囲気の会場を和ませようと、登壇社員の方が笑いをとる場面も見られた。
航空業界は、旅客や貨物を日本各地、世界各地に運ぶ輸送業・サービス業というイメージが強い。一方で、日本航空ではクレジットカード事業、地域事業など、空輸には直接関係なさそうに感じられる事業も展開している。航空業界とは、「人とモノの移動を通じて、世界中の人々の生活を支える産業」。講演会では、単なる輸送業にとどまらない幅広い事業内容を詳しく聞くことができた。
続いて、航空業界の現在地へと講演のポイントが移った。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響で、日本航空に限らず航空業界全体が大きな打撃を受けた。航空業界は現在、コロナ禍を乗り越えて復調傾向にある。講演会では、グラフを用いたわかりやすい解説で、航空業界がコロナ禍前の活気を取り戻しつつあることがわかった。
航空業界とサスティナビリティ(持続可能性)についても、今回の講演で詳しく話を聞くことができた。日本航空はESG戦略を「価値創造・成長を実現する最上位の戦略」と位置付けており、航空業界全体でSDGs達成に向けた取り組みや社会の諸問題を意識した経営に力を入れていることが理解できた。
講演には客室乗務職の方と、総合職にあたる業務企画職の方が来られ、それぞれの仕事内容についても簡単に話した。航空業界で働く人というとキャビンアテンダントを想像しがちだが、航空会社には客室乗務職だけでなく、総合職という働き方もある。航空業界には幅広い活躍のフィールドが用意されているようだ。
質疑応答パートでは、講演会に参加した塾生から活発に質問が投げかけられ、時間の都合ですべてに答えることができないほどだった。AI(人工知能)など新しい技術の活用に関しての質問や、入社前のイメージと実際の違いについての質問などがみられ、非常に有意義な時間となった。
1日をかけて開催された業界講演会で、実際に社会で活躍されている塾員の方の話を直接聞いて、参加者は業界についての理解を深めることができた。今後の学生生活や研究活動、就職活動に役立てることで、今回の講演はより意味のあるものになるだろう。