慶大では、協生環境推進室が主導となり、「@easeプロジェクト」という障害のある学生へ向けた支援を行っている。協生環境推進室の取り組みについて、黒田絵里香さん、屋部史さん、吉田明さん、島田由美子さんに話を聞いた。
協生環境推進室が行う支援内容は機材提供から人的交流まで多岐に渡る。@easeサポーターと呼ばれる学生も支援に参加し、聴覚に障害をもつ学生の代わりに講義を書き取ったり、音声を文字化するアプリケーションを紹介したりする。支援の内容は当事者である学生との対話を通し決定されるという。
協生環境推進室の支援を受けた学生からは、「授業を受ける際のハードルが下がった」との声をよく聞くという。障害をもつ学生の中には、授業中に体調が悪化しても周囲の視線を気にして行動できない人も少なくない。しかし、予め先生側に事情を説明しておくことで、学生は退出する際も理解を得られていると感じ、気が楽になる。
支援の中で難しさを感じる場面も多々ある。特に、学生本人からの申し出がなくては支援の手を伸ばせないことがもどかしいところだ。症状について本人が気付いていない場合、合理的配慮をあえて主張したがらない場合など様々だ。
また、障害のある学生の試験時間延長などをはじめとした合理的配慮は、一般の学生から不公平と取られることもある。これに対して、そもそも「配慮」という言葉自体が不適切で、本来的には「調整」と呼ぶべきだという。障害のある学生に対する特別な措置や支援は、あくまで学習環境の基準を他の学生と同等程度に調整するためのもの。当事者の学生と対話する際にもこの「調整」の視点を基に話し合いによる合意形成を図る。
この「合理的調整」の考え方を広めるため、協生環境推進ウィークで障害に関する映画を観たり、専門家から話を聞いたりする機会を設けている。将来的には、現在50人ほどいる@easeサポーターと共に塾生から塾生へ情報発信をする企画も考えている。
取材の最後に塾生へ向けたメッセージを貰った。「障害のある人のために何かをしよう、ではなく皆さんのお友達とか、日々の人と人とのかかわり方一つ一つ大事にする。こういうマインドセットをぜひもっていてください」
(余澤愛)