慶大では、秋学期から春学期にかけて塾員と塾生が共に活動する新たな活動が始まった。それが塾生メンタリングプログラムである。福澤諭吉の教えである半学半教の精神のもと、塾員がメンター、塾生がメンティーとして共同で協生環境(DEI)について考えることを目的としている。慶大協生環境推進室長の奥田暁代常任理事にプログラムについて話を聞いた。
協生環境を目指して
そもそも協生環境とは、立場によらず互いを尊重し、認め合い協力しあう環境のことで慶大ではこれを推進している。メンタリングプログラムは元々、女性のエンパワメントとリーダーシップの促進を目的に2022年度から慶大の女性教員を対象に実施されていた。本プログラムもその精神に基づき、一方的な助言ではなく、ともに成長することを意図し、この度塾生メンタリングに応用することになったという。
プログラムの設計は協生環境推進室の事業委員の教員や、同室の職員で構成されたワーキンググループで検討された。そしてこのプログラムの要である塾員メンターには、日頃慶大の協生環境推進を支援している塾員に協力を仰いだ。メンターには卒業生の多様な経験や知識を学びとして役立ててほしいという。また、半学半教の精神から、メンティーもメンターの学びに関わり、刺激となるような役割を担ってほしい。
このプログラムは塾員2~3名と塾生4~5名からなるグループに分かれており、異なる学部に所属する学生と多彩な職場で活躍する塾員で構成される。基本的にはグループごとにオンラインで活動を行う。ただし、10月30日に行われたキックオフイベントは対面で開催され、メンティーとメンターが顔合わせとディスカッションを行った。今後はグループごとに協生環境にまつわるオンライン・セッションを設定し、毎回トピックを決めてディスカッションを行う。中間報告会等は対面で実施する。
それぞれの成長を期待
プログラムの目的の一つとして早い時期から社会で活躍する塾員と触れ合い、卒業後の進路やライフプランを考えてほしいというものがある。募集要綱にはメンティーは低学年の学部生を優先すると明記されていた。
塾生には対話から生まれる気づきやきっかけを大切にし、多様な環境を尊重してほしいと語る。また普段から読書の習慣をつけ、知識を得て社会の動向に敏感になり、アンテナを張ってほしい。そして得たものを活用して積極的に議論に参加し、情報を共有して議論を引っ張っていってほしいという。受け身になるのではなく、主体的に動くことを期待する。
今回のプログラムは塾員が塾生に一方的に指導するものではない。議論を通じて両者が協生環境について考え、慶大、そして社会の将来あるべき姿について考えていく。このプログラムを通して具体的に慶大が取り組むべき改革を提案することができるようになってほしい。あるいは個人レベルでは今回の交流をきっかけに多様なあり方や生き方について考え直す、自分の将来について考えるなどのきっかけを得て欲しいとのことだ。塾生メンティーと塾生メンターが慶大の原動力となることを期待すると語った。
メンタリングプログラムのこれから
まだ第一期生の活動が始まったばかりだが、奥田理事はこのプログラムがメンターとメンティーの双方にとって実りあるものとなり、貴重な交流の場として続いていくことを願っている。
塾員と塾生が密に触れ合うことのできる機会はそう多くない。他の学生や様々な分野で活躍する塾員から学ぶことも多いだろう。塾生はこの機会を有効活用し、視野を広げ、社会レベル、個人レベルの双方で成長を感じてほしい。そして慶應義塾の半学半教の精神がこれからも続き、慶應義塾や社会の発展につながることを願う。
(増田リコ)