私たちの社会になくてはならない存在の「金融」。しかし多くの学生にとって「興味はあるが、詳しくはよく分からない」というのが、正直な印象ではないだろうか。
そんな学生を対象に、実際に経済・金融の最前線で活躍する企業から講師を招き、M&Aや投資信託などのテーマごとに様々な勉強会を開催している学生団体がある。昨年、活動10年目を迎えたShare-Projectだ。
今年度のM&Aコースは6月の毎週日曜を中心に計4回行われた。最初はM&Aとは何かという説明から始まり、全くの初学者でも学べる形だ。最終回は参加者による模擬プレゼンテーション。今年のテーマは「SONYの買収提案」。その回の講師派遣企業のメリルリンチ日本証券の社員が質疑・フィードバックを行った。
協賛・協力企業は、Share-Projectの理念に共感する企業としており、シティグループ証券、大和証券キャピタル・マーケッツなどが名を連ねる。
参加者にとっての魅力の一つは、Share-Projectが非営利の学生団体であるということ。参加費も通常の企業の予備校が数万円かかる場合があるのに対して、数千円しかかからない。また学生団体という中立性から企業の利権がからまず、企画に合った最適の企業を講師として選べる。しかし、企業対学生の力関係から企業利益に流されそうになることもあるという。
運営上の苦労について、M&Aコースを統括した上中直さん(早大4)は「企業と学生側とで勉強会についての見え方が違う。そのズレをどう調整していくかにやりがいがある」と語る。
スタッフを務めた貴志直矢さん(法3)は「無事終わって、ほっとしている。でも次の仕事に向けてすぐ動かないといけない」と話し、その目は次に向けられていた。
イベントを運営するにあたり、講師派遣の企業が決まらないときなど挫けそうになることはある。しかし、「学生団体という立場からどれだけ自分たちの主張を通せるか企業と駆け引きをし、それが叶った時の達成感や、一つのものをチームで作り上げる楽しさが、魅力的だ」と上村諒代表(早大4)は語った。
今年度、取材を受けるのは初めてだというShare-Projectだが、意外なところで紹介されている。とある就職活動関連本のエントリーシート例文として、当イベントが登場しているのだ。また、Share-Projectを通じて知った企業に興味を持ち実際に就職した参加者もいたという。
今回の取材を通して、大学では学べないようなことを勉強できる、学生という枠を超え企業とディスカッションができる、そして大学や学年を超えてこれからもずっと付き合っていける仲間をつくることができるという点がShare-Project勉強会の一番の売りであると感じた。
この夏、Share-Projectは株式ファンドをテーマとしたAMコース、債券市場について学ぶBMコースなどの勉強会を開催する。詳細や応募は以下の団体ホームページから。
http://www.share-project.com/index.html
(乙部一輝・工藤玲奈・花田亮輔)