「自分で考えること」の大切さを話す佐藤教授
「自分で考えること」の大切さを話す佐藤教授

なぜ大学に行くのか。大学で学ぶこととは何か。根源的な問題でありながら、明確な答えを出せる学生は少ない。大学生での学問について書かれた『アカデミック・スキルズ』の編集者である、商学部の佐藤望(のぞみ)教授にお話を伺った。高校での学びと大学での学び、一番大きな違いとは何か。教授は「自分で考えるかどうかということ。高校までの問題には教師が答えを用意していますが、大学ではそれがないことが多い。答えは幾通りもあって、そこに至る筋道が論理的かどうかが問われます。大抵の学生はそれに戸惑う」と語る。自分で考えるといっても、「自分はこう思う」ということだけでなく、「自分の意見の他にこんな意見もあり、あんな意見もある」というものを取り入れて、客観的な視点から論証する力を指している。これを教授はクリティカル・シンキングと呼び、大学ではこの考え方を常に意識して、身に付けてほしいと語る。では社会を目前に控えた大学生にとって、クリティカル・シンキングはどういった価値を持つのか。これについて佐藤教授は「企業で求められるのは『ある状況を分析しながら自分の能力と思考を考え合わせ、自分がどういう貢献をしたら組織が医大のパフォーマンスを発揮できるかを考えて、実行できる人』。そこで必要なものもやはり『考える力』。大学はその疑似体験が多く出来る場所でもあります」と語る。普段から多くの大学生と講義やゼミを通じて接する立場にある佐藤教授は、最近の大学生の傾向について「大きいものにぶら下がることをよしとする学生が増えているように思う」と指摘する。その上で「単位をそこそこ集めて、要領よく就活をして、それで選考に生き残って・・・そうやってなるべく挑戦を避けて、小手先のテクニックで大きいところにぶら下がって生きていくのはやめましょう」と警鐘を鳴らす。教授は取材の中で、「これからは自分で考えて判断して、企業の体質や就職先なども自分で見極めていかないといけない」と話す。最後に「慶應は定食を用意してくれる場所ではない」と教授。その心を問うと、「慶應ではずっとスポーツに打ち込むのも資格の勉強も、ずっと家で寝ているのも、もちろん勉強に打ち込むのも自由。ただ自由な行動の結果もまた自分で引き受けなければいけません。それが本当の意味での『独立自尊』ですから」と答えてくれた。(岡本 直人)