11月23日14時、南校舎ホールにて、慶應メディア・コミュニケーション研究所が主催する中田敦彦氏(オリエンタルラジオ)の講演会が開かれた。中田氏は登壇のため、本日12時にシンガポールから緊急帰国するほどの気合の入りようで、会場は大盛況だった。

 

中田敦彦、“挫折と恥にまみれた”半生を語る

 

中田氏は、講演の冒頭で、「今回、慶大で講演をさせていただくということで、学生として登壇した22年前の三田祭での初舞台が思い出される」と語り、その感慨深さを述べた。講演では、慶大時代に三田祭のお笑いライブで登壇したことにはじまる、自身の“挫折と恥にまみれた”半生が語られた。大学時代の相方との訣別、アングラ劇場での長い下積み、さらには、現在の相方・藤森慎吾氏との運命的な出会いから、「武勇伝」におけるブーム、挫折からの復活、そしてYouTuberとして成功を収めた現在までを、ユーモアを交えながら情熱的に語った。

中田氏は、自身の芸人としての人生を振り返りながら、自身の人生は「成功と挫折の繰り返しだった」という。バイト先での藤森氏との出会い以降、オリエンタルラジオ結成を経て「武勇伝」で大ブームを巻き起こした中田氏だが、そこからの失墜は怒涛のように過ぎ去ったと振り返る。自身のブームが去ったあとの低迷期では、どんな無茶な仕事も引き受けたといい、特に「韓国まで行き、手相の整形手術をしたが、あまりにも凄惨な映像となったために、ほぼ全編がお蔵入りとなった」というエピソードは観客に多大なインパクトを与えていた。また、葛藤の末に完成した「PERFECT HUMAN」の誕生秘話や、氏に再び襲い掛かった人気低迷とその克服、YouTubeという新たなメディアの誕生による再ブレイクへの経緯など、極めて貴重なエピソードの数々も本人の口から語られた。

 

何度挫けようとも、不死鳥の如く蘇る中田敦彦の“魂”

 

YouTubeチャンネル「中田敦彦のYouTube大学」における成功が記憶に新しい中田氏だが、彼は満足も油断もしていないそうだ。今の自身は「なんとか生き延びている状態」、「成功しているわけではない」とも述べ、自身の半生は「何度も舞い上がっては墜ち、舞い上がっては墜ちるの繰り返し」だったという。それでも、中田敦彦は進み続ける。

「人生がきつくなったら今日のことを思い出し、何度どん底に落とされたとしても這い上がって、なんとか今日まで生きてきた人間(=中田氏)のことを思い出して、がんばってください」と観客にエールを送った。語り終えた中田氏には、惜しみない拍手が送られた。

 

中田敦彦がアドバイス「中田ザンゲ室」

講演後、「中田ザンゲ室」と題されたコーナーが開かれた。匿名で寄せられたお悩み相談に、中田氏がアドバイスするという企画である。送られてきた最初の相談は恋愛相談だったが、熟考の末、中田氏は「わかりません」と回答。「自分もアドバイスできるほど恋愛に詳しくない。アキレス腱がちぎれるほど背伸びしてすみませんでした」と語り、会場は笑いに包まれた。最初のアドバイスには苦戦するも、二題目、三題目はユーモアが溢れながらも、キレのあるアドバイスを学生に送った。

 

「中田さんの生き様に感銘を受けた」主催者語る

 

かねてより中田氏のファンであり、彼の講演を企画した坂井剣一郎さん(経2)は、講演会を成功させるために、中田敦彦氏のYouTube動画をすべて視聴し、彼のオンラインサロンを徹底的に研究・分析したという。中田氏本人も、彼の中田氏への食いつき様は凄まじかったと、講演中に語っていた。坂井さんは、大成功に終わった講演会を振り返り、このように語った。「中田さんの生き様、イズム、哲学に感銘を受けました。当初は自分の道を突き進んでいた方が、近年では、自分と向き合って『人間力』を意識するようになった彼の姿には、観客にも響くものがあると思い、この講演を企画しました」。そして「(中田氏の講演を)実現できてよかった。一人でも多くの方に、中田氏の生き様を通して刺さるものがあれば」と締めくくった。

 

中田氏は会場を爆笑と感動の渦に巻き込む圧巻のトークを展開した。会場の一人一人と全力でぶつかる等身大の彼の姿には、「お高くとまったインテリ」のイメージのかけらもない。彼のユーモアと何度でも立ち上がる不屈の生き様は、観客の心を大いに震わせたに違いない。

 

髙梨洸王駿