血液中のリンパ球から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作ることに、医学部の福田恵一教授らのグループが世界で初めて成功した。従来iPS細胞を作製する際に問題とされていた患者の負担、ゲノム損傷の危険性といった課題を解決する成果だという。研究論文は今月2日、米科学誌「セル・ステムセル」に発表。
福田教授らはセンダイウィルスという遺伝子の運び屋を用いて、リンパ球の一種であるT細胞に4種類の遺伝子を導入。できた「TiPS細胞」が体細胞から作ったiPS細胞と同様、人体のほとんどの細胞に分化可能であることを確認した。
この手法では、最小で0・1㍉㍑の血液からiPS細胞を作製することができた。パンチで皮膚組織を採取する従来の手法に比べ、患者の痛みが軽減される。
また、レトロウィルスを運び屋として用いる従来の手法ではゲノム遺伝子に損傷を与えるため、遺伝子破壊や腫瘍形成などの危険性があった。今回の手法では、ゲノムを傷つけることなくiPS細胞を作製できる。