2023年、劇団四季の創設者である故浅利慶太氏の生誕90周年、劇団四季の創設から70周年を迎えた。このような記念すべき年に、初演から36年にわたって愛され続ける浅利慶太氏の代表作の一つである『夢から醒めた夢』が10月30日(月)から11月19日(日)まで東京の自由劇場にて上演されている。
今回は、前作の『オンディーヌ』に引き続き、開幕を直前に控えた稽古場を取材した。
『夢から醒めた夢』は赤川次郎による絵本『冒険配達ノート 夢から醒めた夢』を原作として浅利慶太氏が手掛けた日本のオリジナルミュージカルである。初演は1987年で、その後長きにわたって愛され続けてきた。
公演を1週間後に控えた稽古場では、音楽に合わせた歌やダンス、セリフや微細な動きに至るまでさまざまな調整が行われていた。
普遍的なテーマを伝える
物語は好奇心旺盛な少女ピコ(四宮吏桜)が夢の配達人(下村青)に夢の中へと導かれる場面から始まる。夢の中でピコは、不運な交通事故によって命を落とし、お母さんと離れ離れになってしまった心優しい少女マコ(中村ひより)と出会い、一日限りでマコと入れ替わることになる。マコの代わりとなって霊界にやってきたピコは、さまざまな幽霊たちと出会うが、とある騒動に巻き込まれてしまう……。キャストたちの演技はもちろん、ダイナミックなダンスや美しい歌声を初演から受け継がれてきたセリフや音楽とともに味わい、大人から子供まで楽しむことができる至高の一作だ。
たった一夜の夢という儚いものでありながら、舞台上には我々が決して忘れることができないメッセージがある。ピコやマコ、霊界の人々のやり取りから伝わってくる愛、友情、勇気や命の大切さなどの時代を超えた普遍的なテーマに心を打たれるとびきりの空間であった。
日本人による創作ミュージカルとして
『夢から醒めた夢』は日本人の手によるオリジナルミュージカルを制作する体制づくりの要としての役割を背負った。原作のミュージカル化にあたり、浅利氏の手によって舞台オリジナルのシーンも加えられ、赤川氏による絵本のメッセージ性がより際立つものになった。初演から36年経っても変わらない浅利氏の思いは時代を超えて受け継がれ、日本を代表するミュージカルのうちの一つとなったのである。
(望月海希)
『夢から醒めた夢』
日時:2023年10月30日(月)~11月19日(日)
場所:自由劇場(〒105-0022 東京都港区海岸1-10-53)
チケット:全席8,800円(税込)
主催:浅利演出事務所/協力:劇団四季