半学半数を体現、中国語学習が生んだつながり
一昨年の秋、「曹操」が日吉キャンパスに現れた。
慶應義塾創立150年記念イベントとして文学部中国文学専攻が主催した「日吉電影節2008」。映画『レッドクリフ』で曹操を演じた張豊毅氏をはじめとする中国の豪華俳優たちが慶大を訪問し、学生たちと交流した。第21回東京国際映画祭の提携イベント「2008東京・中国映画週間」の協力により実現した企画だった。
以来、日吉電影節は中国圏の作品を紹介する映画イベントとして、様々な中国系映画の上映、製作関係者による講演会を行ってきた。「電影」は、中国語で映画を意味する。
現在、日吉電影節の開催を支えるのは20人ほどの学生スタッフから成る「日吉電影節実行委員会」。大学公認団体ではないが、中国語の授業などでのつながりを通じてメンバーを集め、ジュンク堂書店とのタイアップ企画の実施など精力的な活動を行っている。
活動理念は、中国に対する理解の促進・中国語学習者の意欲向上。「ただ学校で勉強しているだけでは語学に対する関心は狭まっていってしまう」と語るのは、代表を務める池谷耕作さん(法3)。映画上映やゲストによる中国語の講演を通じて、「実学」としての語学の意義や中国映画の魅力に目を向けてほしいという。
先月25日に行われた第4回目のイベントは、慶應義塾が優れた教育プログラムに対して支援を行う未来先導基金の2010年度公募プログラムに採択された。
中国の映画関係者との連絡や交渉にあたっては、東京国際映画祭などが協力。映画祭側にとっても日吉電影節のようなイベントは、多彩な外国映画に対する一般の興味関心を高めるうえで貴重な存在であるからだ。
とはいえ、実行委員の学生の仕事も決して楽なものではない。「ゲストを活かしたイベントの企画やアテンドに関する対応など大変なことは多かった」と池谷さんは振り返る。
実行委員会の活動は、2008年の第1回イベントの運営をしていた慶應義塾高校の吉川龍生教諭が同校の卒業生に声をかけたことが始まり。
「慶應義塾高校では多くの生徒が中国語を学んでいる。興味を持ってくれる卒業生はいると思っていた」と吉川教諭は語る。第2回目以降、イベントを企画する醍醐味を知った学生の方から継続してより主導的に関わることを希望するようになったことは、吉川教諭にとって嬉しい誤算だったようだ。
大学のイベントに触発された学生が、今度は自分たちが多くの人々を啓発しようと行事を企画する――日吉電影節は慶應義塾の理念である「半学半教」を見事に体現した存在と言えるかもしれない。
(花田亮輔)