我が国には良い商品やサービスが数多く存在する。しかしながら私達一人一人はそれら全ての商品やサービスについて知っているわけではない。メーカーや職人、クリエイターの方々がどんなに情熱と技能を込めて作ったものであっても、多くの人に知られなければその価値を世の中に広めることはできないのである。チームの努力の結晶でもある商品やサービス、取り組みを世の中に伝えるために私達にできることは何か?その答えを探る上でぜひ参考にしてほしい書籍がある。
月刊 広報会議
広告とは異なる広報、それは一体何か?どのような使命を持ち、どれほど力強く、魅力のある業務であるのか?それに答える一冊が、株式会社宣伝会議より毎月発行されている「月刊 広報会議」だ。企業をはじめとする組織が持続可能な成長をしていくために欠かす事のできない広報という業務について、基本的な内容から最新のトピックに至るまで紹介されている。また教科書の中ではなかなか触れられることのない最近の企業の取り組みなど、実際の事例に触れているという点も、就職活動中の塾生や企業と共に歩む塾生にとって大きな見どころであろう。
売り込むだけが広報ではない ー広報という組織に欠かせない重要なミッションー
広報はマーケティングと同様に商品やサービスの普及促進のための土壌を作るという印象が根強いが、広報の持つ強みはそればかりではない。組織の一体感醸成やコーポレートガバナンスの向上、組織活性化に寄与するインターナルコミュニケーションも広報の持つ一側面であり、また組織に問題が発生した緊急時における社会への情報提供というクライシス対応なども広報に課される重要なミッションである。このように広報は一見形に見えない業務でありつつも自らの所属する組織を社会の中で可視化することに寄与し、その組織の成果を最大限に活用した上で緊急時には組織を守るという攻守双方を担う大切な使命を持つ業務なのである。
就職だけでなくサークルや同窓会、組織運営にも ー人生を通じて広報は重要な分野!ー
広報は何も就職の時のみに必要な知識ではない。例えばサークル活動の時など、より多くの会員を効果的に勧誘するにはどうしたら良いか、皆で作った実績を周囲に知らせるにはどのような方法があるのか。アルバイトや就職をしたあとにその企業に貢献する上でも、広報の視点は一人一人のキャリアに対し良い影響を与えるであろう。社団法人などの役員となった際も、会員の獲得や取り組み内容の普及という学生時代のサークル活動と通底するミッションを担うこともある。このように、広報は人生を通じた実学として学んでおいて損のない学問なのである。
企業リサーチや業界動向を探るお供に
努力が必ずしも成果として現れるとは限らないこの厳しい世の中において、私達一人一人の投じた情熱や努力・知恵を最大限に発揮するためのもう一押しとなる技能は一体何か。過酷さが増す今日の我が国の社会環境で、広報の視点が人生の突破口を見出す一つのきっかけとなれば幸いである。またこの書籍は、日々大学で学ぶメディア論や政治学に関連する講義において実際の業務への橋渡しをする役割を果たすであろう。先程も示した通りこの書籍は最近の業界研究や企業情報についても参考となる要素が盛り込まれている。メディア論や政治学を学ぶ人のみならず、学際的な分野を学ぶ人や社会人の方々にもおすすめの一冊である。
(小関雄介)