毎年、何人ものプロスポーツ選手が、大学スポーツから生まれている。特に野球、サッカーなどは注目度が高く、派手で結果に注目が集まる。しかし、大学スポーツの本質は、4年間で積み上げた努力にあるのではないか。それぞれが、4年間の使い方を考え、全力で努力する様子を伝えたい。今回は、體育會射撃部を取材し、日々の練習に迫る。

 

ライフル射撃の歴史

射撃は、ライフル射撃とクレー射撃に分けられる。慶大射撃部は、ライフル射撃を行っているため今回は、ライフル射撃のみ取り上げる。ライフル射撃は、長い歴史を持ち、世界中で大変人気なスポーツである。近代オリンピック競技として第1回アテネ大会から実施されており、また参加国数は、陸上競技に次いで多い。その理由は、射撃が高い身体能力を必要としない点にあるだろう。射撃は、激しい動作は伴わない。しかし、的を狙い続ける集中力、精神力が求められる。

日本の競技人口は約10,000人ほどだ。あまり体力を必要としないため、幅広い年代に楽しまれている。慶大射撃部の歴史は古く、創設は1924年にまで遡る。昨年度の戦績としては、全日本学生選手権大会(インカレ)で男子総合団体は5位、女子総合団体は7位に入賞した。日本学生選抜選手権大会で、男子総合団体3位に入賞した。また各選手個人でも結果を残している。

 

ライフル射撃の競技概要

ライフル射撃には2競技ある。一つは、10mエアライフルと呼ばれる競技。空気銃を用いて10m先の的を狙う。1時間15分の競技時間で合計60発撃つ。的は中心からの距離で得点が分かれており、60発の得点の合計を競う。撃つ時の姿勢は、立射と呼ばれ立った状態だ。10mと近い距離でさらに反動が少ないが、はずしてはいけないプレッシャーがかかるという。それに対してもう一つは、50mライフル3姿勢と呼ばれる競技で、実際に火薬用いた銃で行われる。膝立ちで撃つ膝射、伏せて撃つ伏射、立射のさん姿勢でそれぞれ40発ずつ、合計120発を撃つ。競技時間は2時間45分にもなる。どちらの競技も、競技時間が長く高い集中力を継続することが求められる。小林敏晴さん(法3)は、射撃の難しさは、メンタル面にあるという。「射撃は、自分の動きを止めるスポーツなので、メンタルや体の調子を整えることが大切です。小さな的を狙うため、継続した集中力はもちろん一発ずつ撃つ瞬間には集中力を高めなければいけません」。

 

地道な練習の積み重ね

「射撃の上達には時間がかかり、地道な練習が必要です。続けられたのは、同期に負けたくないという気持ちからでした」。射撃部島村優祐さん(法3)は、これまでの射撃部の活動をこう振り返る。慶大射撃部では、ほとんどの部員が大学から射撃を始める。これは、慶大射撃部の大きな特徴だ。強豪大学の競技経験が長い選手に、負けないように普段の練習に励んでいる。練習は、週ごとのノルマ制を取っており、自分の予定と合わせやすい。週ごとに5コマ分の練習をすることが求められ、そこで個人が各々練習に励む。「その場の根性だけでどうにかできる競技ではありません。普段からの地道な練習が大切なのです。」副主将の山口昌太(理3)さんは、普段の練習の大切さを強調する。そのような、地道な練習を続けられたのは射撃の競技自体の魅力にあるという。「練習が実を結び、点数が伸びたときの魅力が大きいです」。

島村優祐さん(法3)

 

部としての一体感を

個人の練習が基礎となる射撃だが、慶大射撃部では部全体の一体感も強調する。新入生のほとんどが初心者のため、指導は主に先輩が行う。先輩からの指導を通して、射撃に関する基本的な知識を身に着ける。先輩からの指導は、成長に不可欠なものだ。小林さんは、「先輩からの指導は、自分にいいものかはわかりませんが、指導を通して試行錯誤を繰り返しました」と話す。

 

今後への期待

昨年は、早慶戦にも勝利した。射撃部への期待はますます高まる。主将這越天音さんは、「射撃は誰でも始めることができてほとんどの部員が初心者ですが、毎年何人もの選手がインカレに出場しています。まだまだ知名度は低いですがこれからも応援よろしくお願いします」と塾生にメッセージを送った。

射撃は、身体的には誰でも楽しむことができるスポーツである。だが、メンタル面では、高い集中力、動じない心が必要とされる。大学からはじめ、仲間同士で切磋琢磨し、経験者を追い越さんとする。その経験から得ることができた成長、何かを成し遂げたという経験は、必ず人生の糧になるものではないか。

(鈴木廉)