慶應義塾研究支援センター本部主催の小泉信三記念講座が先月21日、三田キャンパスで開かれ、アジア開発銀行の黒田東彦総裁が講演を行った。
1968年から続く本講座は、故・小泉信三博士を記念して設立された小泉基金により運営され、年に数回開催される。今年度初となる今回は竹森俊平・経済学部教授がコーディネーターを務め、黒田総裁を招いた。
「発展するアジア経済と日本の役割」と題された今回の講演では、今後のアジア経済の見通しと課題、そしてその中での日本の成長戦略や果たすべき役割について講義がなされた。
講演の中で黒田総裁は、アジアにおける地域経済協調・統合の現状について紹介。経済協調を進めていくことにより、結果的に日本とアジア各国との間でウィン―ウィンの関係を築いていくことの重要性を強調した。その上で、アジア版グリーン・ニューディールや、東アジア圏の広域FTAのための基盤として日中韓でFTAを締結するなど、様々な構想を示した。
欧米各国を中心とした外需が頭打ちとなり、少子高齢化時代で内需にもあまり期待できない日本、「これからはアジアの成長に貢献しながら自らも成長していくことが肝要」と黒田総裁は語った。
質疑応答の時間には、今後アジア圏で広域な地域経済協調がなされた際に統一通貨を導入すべきか、といった質問を中心に闊達な議論が交わされた。引きも切らない質問に竹森教授、黒田総裁の両人が圧倒されるような一幕も見られ、講演は盛況の内に幕を閉じた。