義塾は今年度の収支予算を発表した。消費収入(学生生徒等納付金など)と消費支出(人件費など)の予算額を示す消費収支予算=表参照=は、昨年に引き続き支出超過となっている。特筆すべき項目として、創立150年記念事業を堅実に遂行すること、各部門で積極的に経費を削減すること、資産運用はリスクを考慮し、堅実路線を維持することなどを挙げている。 (陶川紗貴子)
今年度の事業計画では、「教育・研究・医療について、引き続きその質の向上を図ること」及び「教育・研究・医療の各側面において、社会の構造変化(国際化、少子高齢化、IT化、地球環境の変化、地方分権化など)に鑑み、義塾のあり方を検討し、必要と考えられる変革を進めること」を基本方針とした。
義塾はこれらを前提として、義塾財政の状況を改善しながら、安定した財政基盤の構築に努めるとしている。
事業計画の基本方針に基づき編成された今年度予算では、各キャンパスにおける建物の耐震補強工事の実施など、学生・生徒・患者などの安全・環境に配慮したキャンパス環境の充実、病院のER体制の充実、医療の質向上と効率化を目指すシステムの構築に重点が置かれた。
予算編成方針では、①健全かつ安定的な帰属収支バランスを実現させるために、支出面で昨年度予算と比べて原則として2%以上の削減を目標とすること②今年度を財政改善の初年度と位置づけ、4年後には帰属収支差額のプラス分で、経常的に発生する施設・設備関係の支出の半分程度を賄えるようにすること③創立150年記念事業については新たな事業を追加せず、義塾全体の収支を勘案しながら進めること――などを目標とした。
今年度実施予定の主な創立150年記念事業としては、未来先導館(仮称)を含む三田南校舎建替工事の55億円、信濃町3号館建設工事の32億円、中等部体育施設建設工事の9・6億円など、合計で111・6億円の予算が計上されている。
また、創立150年記念事業のうち、延期されている横浜市での一貫教育校の新設や日吉記念館の建替、新病院棟の建設に関しても、実行に向けて検討を続けることに変わりはないという。
経理部課長の大古殿憲治氏は「学校の経営は長期的な視点で考えないといけない。今年度が財政改善の初年度であることを踏まえ、今年度の決算時には帰属収支差額をプラスにしたい。」とコメントしている。
▼用語解説
帰属収入は、学生生徒等納付金、手数料、医療収入、寄付金、補助金等の収入であり、借入金収入や前受金収入といった負債となる収入は除かれる。消費支出は、人件費、教育研究経費、病院経費、管理経費など当該年度に消費する支出。
帰属収支差額は帰属収入から消費支出を引いた金額のこと。帰属収支差額がプラスということは、自己資金として、将来的な施設設備などのを充実や借入金の返済の財源として確保することができることを示す。