「教職課程を履修する人は、みんな教師になるの?」「サークルやバイトとの両立は大変?」‥‥など、教職課程の履修に対してあらゆる疑問を抱えている塾生は少なくないだろう。

今回は、現在教職課程を履修している24名の方々の実際の声を紹介する。来年度以降、教職課程の履修を考えている方や迷っている方は必見だ。
ページ最後には、履修のお役立ち情報も掲載中!

 

教職課程に登録したのはいつ?

教職課程を履修するには、通常3年間(最短で2年間)を要するので、履修案内には「原則として第2学年または第3学年に登録する」と記載されている。

アンケートでは、8割以上の方が2年生の春に登録したと答えている。

なぜ教職を履修し始めた?

「なぜ教職課程を履修し始めましたか?」という質問に対して、11名が「教師になりたいから」と回答。教師を志したきっかけとして、親の影響という回答が複数あった。

  • 教師であった父親が、生徒とのやり取りを家で楽しそうに話す様子が印象的で、他人を笑顔にさせる「教育」「教師」に強い関心を抱くようになった。
    他にも、
  • 院進学およびその後の進路の保険として教師免許を取得するため
  • 夢である大学教師を目指す上で、必須ではないが英語教育について勉強したかったから。また、中高で非常勤講師として働く可能性はあるから。
  • (文学部で)教育学を学ぶのであれば、将来教師という職業も視野に入れたいと思ったから。また単純に教職の勉強に興味があったから。

教師になるためという理由だけでなく、「将来の保険」や「教育に対する興味」という回答も目立った。教職を履修し始める理由は人それぞれ。自分なりの目標を持って、計画的に履修したい。

卒業後は教師になるの?

一つ前の質問によると、「教師になりたいから」という理由で教職課程を履修し始めた人は、24名中11名と約45%を占めていた。

しかし、実際に履修をしている(またはし終わった)段階で教師になることを志している人は25%という結果に。

免許教科はどうやって選ぶ?

教職課程センターに登録する際には、免許教科を選択しなければならない。
ただし、「学部・学科によって取得できるとされている免許教科は異なっている」ため、注意が必要だ。(※免許状の種類と教科については履修案内参照)

「なぜその免許教科を選択しましたか?」という質問に対し、「好きな科目だから」あるいは「得意科目だから」という回答が16件と最多。恩師に憧れて同じ教科を選んだという回答も見られた。他には、

【英語科】

    • もともと高校英語のみ取る予定でしたが、教職課程に登録した時期にあった最初のガイダンスで中高の免許を一緒に取ることを強く推奨されたから。
    • 将来大学受験の予備校で英語を指導したいから。

【社会科】

    • 自身が中学生のころ、社会(特に歴史)の物語のような授業展開をとても魅力的に感じ、現在までの学習意欲が高まったため、そのような学習を現在の中学生にも少しでも届けたいと感じたから。
    • 商学部では、その科目しか取得できないため。

【国語科】

    • 最も興味が持てて、かつ(教職の国語科と国文学専攻の必修科目で被っているものが多いため)効率的だから。

自身の特性を鑑みて選ぶのはもちろん、学科や専攻での学びも考慮しながら慎重に選ぶことを心がけたい。

教職履修者が持つ「教師」の印象は?

「教師という職業に対する印象を教えてください」という質問に対して、「とても魅力的」と回答した理由は以下であった。

  • 多方面から子どもを育てる唯一無二の職業。子どもの笑顔を見たり、成長を感じたりすることができた時の幸福感は何事にも代えがたいものだから。

41%と最も多かった「やや魅力的」という回答の中には、教師としてのやりがいとブラックな側面の双方を指摘する意見が目立った。

  • とてもやりがいのある仕事であり、生徒と一緒に成長し、学び続けられる職業であると思っている。しかし昨今は、ブラックであるとか忙しすぎるというイメージか強くなってしまっているし、実際そうであるということは否定できないと感じるため。
  • 素直な子供たちと精力的な教師仲間と一緒に活動できて、精神的に満たされそう。ただし若干高慢な採用姿勢、仕事に見合ってない給与はやや不満。

「あまり魅力的でない」という回答の理由には教師の労働環境に対する懸念が挙げられていた。

  • 同じことを毎年教えるのはつまらなそう。労働環境も悪そう。何より将来が見通せてつまらない。
  • 多忙。モンスターペアレント

その他、労働量と給与の不釣り合いや、青少年特有の諸課題(いじめや不登校、非行など)への対応、さらには教職に対する社会的評価の低さが、教師という職業の魅力を差し引いているという意見もあった。

教職課程履修のメリット・デメリット

 

【メリット】

  • 教師の仕事がよくわかる。免許があるという安心感(セイフティネット的な意味で)。
  • ①自分以外の教員志望の学生との交流を通じて、自身のモチベーションを向上させられる。②そういった他の比較を通じて、「果たして自分が本当に教師に向いているのか」とか「自分が理想とする教師とは何なのか」とかいった問いについて内省する機会が数多く得られる。③教職科目には、非常に有意義なものが多い。私の場合例えば、生徒指導論、教育方法論、教育心理学が印象深い。

教職課程の授業では、学部学科学年を問わず様々な学生とディスカッションをする機会が設けられているため、授業内で多くの仲間ができることも魅力の一つだ。また授業で得られる知識は、将来、仕事での後輩育成や子育てにも役立つという意見も多数あった。

【デメリット】

  •  学科・専攻によっては卒業単位に加算されない単位を履修しなければならなくなり、スケジュールが圧迫されること。
  • ①4年時の就活と教育実習がかぶり、一般企業への就職活動がとても大変になる。②免許を取得しても、公立なら国が実施する教員採用試験に合格しなければならないし、私立なら大学院を出ても専任(フルタイムでの雇用)で雇用されるとは限らず、就職という点で非常に不利な職業。
  • 土曜に授業ある可能性アリ。週5登校、週6登校が多い。朝~夕方まんべんなく授業あり。

デメリットとして多く上がっていたのが、やはり取得単位の多さであった(教職課程履修生の時間割については最後に取り上げているので要チェック!)。

さらに、教育実習が前期にある場合は、民間企業の就活の時期と被ってしまうことが懸念される。ただし、実習校によっては、後期(夏休み後)に教育実習生を受け入れる場合もある。

サークルやアルバイトと両立できる?

大学生活の醍醐味とも言える、サークル活動やアルバイト。どちらに関しても、約半数が両立は容易であると答えていることから、授業時間外の時間は有意義に過ごしている学生が多いことがわかる。忙しい中でのタイムマネジメント能力は教職課程の履修の賜物であるかもしれない。

體育會との両立にはかなりの覚悟が必要であるとの意見もあった。両立は不可能ではないが、「教育実習期間中は體育會の活動に出られないと思った方が良い」という。

教職実力テストって?

教職課程を履修している塾生にとっての大きな関門となるのが、教職実力テスト。毎年5月と11月に実施されるこのテストに「教育実習を実施する前年度までに合格」しておかなければならない。

なお、教職課程センターによると、「2025年度以降に教育実習を履修する場合は実力テストの廃止など要件の見直しが行われますので、掲示等に留意してください」とのことだ。

※英語科とフランス語科の実力テストには免除条件がある(履修案内参照)

約80%が、特別な試験勉強をせずに合格できたというが、教職課程センターに設置されている過去問(持ち出しやコピーは不可)を見て、出題傾向を把握したそうだ。

試験勉強のした方のアドバイスは

  • 地理と世界史をほぼ勉強したことなかったので、地理は人に大学受験の教科書をもらい、世界史は山川の参考書をひたすら読みました。
  • 英検のライティング対策をやる。英文法を一通り復習する。(実力テストは難しいしリスニングのあまり音質も良くなかったので英検を取って試験をパスすることをおすすめします!)

なお、教職課程センターによると、2025年度以降に教育実習を履修する場合は実力テストの廃止など要件の見直しが行われる。変更に関しては掲示板でアナウンスがなされるため、注意が必要だ。

課題や単位取得は大変?

先程、取得単位の多さが「教職課程のデメリット」として挙げられていた。しかし、単位の量は多いものの「単位は取得しやすい」という回答が70%以上に。

課題の量は、もちろん担当教員によって異なるが、約半数が多いと感じているようだ。

 

教育実習のやりがい・大変なことは?

教員免許取得に不可欠なのが、教育実習。「教育実習後、教師の志望度は変わった」と答えた方は、実習で生徒や現役教員と関わることを通して、中学生でも理解できるような話し方をすることの難しさを知ったり、自分の中の「子ども像」と実際とのギャップを感じたりしたという。

教育実習中に大変だったこと・辛かったことについて尋ねると、最も多かった回答は「早起き」に。登校して来る生徒よりも早く到着しなければならない教師の大変さが伺える。
他にも、

  • 非母校で実習したため、学校内で迷子になったり、文化差におどろいたりした
  • 指導教員の先生と夜まで学習指導案を作ったこと

実習中は大変なことも多いが、同時にやりがいを感じたエピソードも印象的である。

  • 最初は生徒たちと会話もうまくできなかったけど、こまめに話しかけたり、いい授業をしようと努力したりしたことで少しずつ話せるようになっていったこと。
  • 生徒が信頼してくれて論述添削を頼んできたり、進路相談をしにきたりしてくれたこと
  • 非常勤で勤めていた際の経験ですが、学問的関心を持ってくれた子がいたときには、「なんだかんだ教職やってよかったな」と感じました。高3の授業を中心的にもちましたが、卒業旅行のおみやげをくれたこともとても嬉しかったですね。

 

教員採用試験の変化についてどう思う?

東京都教育委員会は2023年度から、教員採用試験の一部試験(「教職教養」「専門教養」)を大学3年生でも受けられるようにすると発表した。

この変更を踏まえ、教師への志望度は「変わらない」という回答が90%を占めた。
その理由として、「採用方法が変わったとしても、教師の労働環境や待遇が変わらなければ意味がないから」という意見が多数。

履修生からのメッセージ

最後に、これから教職課程を履修する塾生へのメッセージを募集した。履修を迷っている塾生の背中を押してくれる力強い言葉の数々を紹介したい。

  • 「教職はきつい」と決まり文句のように言われることが多いですが、無理のない範囲で履修を組めばアルバイトやサークル活動との両立も十分可能です。また、一度登録したからといって必ず免許取得まで到達しなければいけないわけではないので、少しでも興味があったらひとまず教職課程に登録し、単位をとりながら自分のキャリア選択について考えてみてはいかがでしょうか。
  • 教職をやると決めたら、早めに単位を取るのが無難。可能なら1年生の内から取れる単位(般教と、一部教職の科目)は取っておくと余裕を持てるのでいいと思う。
  • 教職課程とる人自体マイノリティだし、そうでなくてもただでさえ教職に関する情報が収集しにくいのが一番大変だと思います。もしそうであれば、慶應内外で先輩ふくめて多くの人と繋がってどんどんお話を聞いてみることをおすすめします。楽単、就活、哲学などなど知ることで、無駄を省き意識を高めることができていいと思います!
  • 締切と提出物とかちゃんとしないと努力が水の泡になる。教職課程センターは融通が全く利かないので、ほんとに気をつけてネ。
  • 教職課程で学ぶことの多くは教員にならなくとも役に立ち得ると感じます。現に、一般企業で働くにしても後輩が入ってくれば仕事を教えるわけすし、将来子供ができれば諸々教えるわけですから、我々の生活と教育は切っても切り離せません。教職課程を履修する方は教師の卵ということもあり意志の固い方も多いですが、肩肘張らず挑戦してみるというのも全然アリだと思います!
  • ①なぜ、自分は教員を目指すのか、スタートラインをしっかり言語化できること、②教職を履修し終えても、安定した雇用が確実に得られないリスクなど、様々考慮した上で、それでも子どもと関わりたい!と思うなら、積極的に履修してみてください!!

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