日吉キャンパス協生館に入って直進すると、日吉図書取次所「日吉の本だな」が左手に見えてくる。近くに英会話教室や保育園があり、夕方には親子連れで賑わう。塾生にはあまり知られていないが、メディアセンターに続いて日吉に設置された、2つ目の図書館だ。昨年1月のオープンから約1年が経つ日吉の本だなは、本そして人との出会いを大切にしている。その役割は、単なる図書取次所に収まらない。
利用者は当初の1.5倍に
図書取次所では、予約した本の受け取りと返却が行われる。事前に図書館カードとパスワード及びメールアドレスを登録しておくと、予約した本の受け取りができる。日吉の本だなは、横浜市立図書館の取次サービス実施場所。開所時間中はカウンター、協生館の開館時間であれば返却ポストも利用可能だ。
若者の活字離れが嘆かれる昨今、なぜ慶大の協生館が取次所の開設場所に選ばれたのか。日吉キャンパスが位置する横浜市港北区には、18区で最多の約36万人が暮らす。港北区図書館が南部にあることと、区に市立図書館の取次所がないことから、図書館サービスへの需要があった。日吉駅の乗降客数の多さを決め手に、慶大の協生館でのオープンに踏み切ったそうだ。
開設から10月までで、約4万5000人に約9万6000冊を貸し出した。毎月の貸出利用者数と貸出冊数も増加の一方で、当初から約1・5倍に達した。塾生や慶大の教職員が利用することもあるという。
「新しい本との出会い」と「多世代交流」がカギ
日吉の本だなは、展示・企画スペースを初めて設けた取次所だ。インターネット上で予約した本を受け取るだけでなく、所内に展示された本を実際に手に取り、借りることもできる。展示のテーマは、「今なら読めるあのベストセラー」「図書館がおすすめする子どもの本」など多岐に渡る。選書は、港北図書館の司書が月替わりで行っているという。
筆者が訪れた12月のテーマは、「冬の行事を楽しむ」。正月に関連した「年賀状のおはなし」「伝統のおせち」や、雪国を描く「白い牙」「雪沼とその周辺」が展示されていた。今の季節と関連しているからか、世代を問わず表紙を見るだけで手にしたくなる本の数々。利用していた子どもたちは、しゃがみ込んで書籍を眺めていた。
日吉の本だながテーマに据えるのは、「新しい本との出会い」と「多世代交流」だ。利用者からは、「いろいろな本に出会えてうれしい」「月替わり展示がとてもいい」と、たくさんの声が寄せられている。「日吉の本だな」という愛称は、4つの候補から港北図書館・港北区役所・ツイッターでの投票によって選ばれたものだ。市民の本棚として、新しい本に出会うきっかけをこの1年提供してきた。職員は、「新しい本や人との出会いをうみ、みなさまから愛される施設へと育つよう、取り組んでいきます」と取材に答えた。塾生諸君も、新たな出会いを探しに、日吉の本だなに足を運んでみてはどうだろうか。
(山下和奏)