午前から細々と降り続けた雨も勢いを増して豪雨となる中、三田祭メインステージにてひときわ輝きを放つ団体がいた。dance crew esは、慶大の中でも最大級の規模を誇るダンスサークルだ。男女さまざまな塾生が多種多様な衣装に身を包み、切れ目なく次々にダンスの技能を見せつける。14時50分になると、暗転した舞台に座り込んだ10人前後とそれに囲まれた数人が突如ライトに照らされ、1時間以上にもわたる公演が開始された。
今回の公演の中で特筆すべき点があるとすれば、まずメンバーの卓越した身体能力が挙げられる。ただ一人としてずれた動きをしない正確さや、長時間のパフォーマンスに耐える持久力、静止する際にも全くぶれない体幹に、足を真上にあげるブレイクダンスを軽々とこなす瞬発力。並一通りの練習では身に付かないであろう技能をいかんなく発揮した。
もう一つの見どころは完璧に練られた構成だ。長丁場にもかかわらずジャンルがほぼ被ることのないダンスが披露され、飽きることなく公演に没頭した。パフォーマンスを終えたダンサーが、次のダンサーに観客の視線を誘導しつつ静かに舞台袖に移動するなど、観客やほかの演者への配慮に満ちたステージだった。
しかし、それ以上に観客の心を動かしたのは彼らの秘める熱い想いだ。MC中に「俺らのやってきたことは間違ってないんで」とまっすぐに伝えるメンバーもいれば、最後のあいさつで「思い通りのダンスができなくて」と悔やみつつ「気持ちっていう面で今までで最高のパフォーマンスができた」と感謝を伝える代表もいた。これにはギャラリーの歓声も止まなかった。我々に知ることができたのはあくまで今回のパフォーマンスの一部であり、彼らがダンスや三田祭にかける想いについては片鱗を垣間見る程度しかできなかった。それは多少の雨で止まるほど、半端なものではなかったようだ。
(松野本知央)