夏に入り、夏インターンや企業分析など、就活に本格的に取り組み始める23卒の慶大生も多いだろう。
そんな慶大生に有用な就活情報を届けるべく、ダイヤモンド・ヒューマンリソース様の協力のもと、3回にわたり企業座談会企画が実現した。
第1弾は、東京駅から新大阪駅まで結ぶ東海道新幹線でお馴染み、JR東海。人事部である鈴木絢子さん、櫻井俊さん、稲永萌黄さんにお話を聞いた。
座談会には、慶大生のAさん(法学部政治学科3年)、Bさん(商学部3年)、Cさん(商学部3年)、Dさん(法学部政治学科1年)の4名が座談会に参加した。
A:他の鉄道事業者と比べて、JR東海さんにしかない事業の強みはどういうところでしょうか。
鈴木:会社がさまざまある中、一つの鉄道会社が持つエリアは限られています。その中でもJR東海は、日本国内の経済を支える、GDPの6割を生み出す東京・名古屋・新大阪を繋ぐエリアを持っています。その規模感、つまり影響力の大きいエリアを持っているということが、JR東海の持っている魅力だと思います。
稲永:現在、 JR東海は日本の持つハード面・ソフト面の両方の技術を、アメリカに展開しようとしています。ハード面の技術というのは車両など鉄道に関する設備そのもの、ソフト面の技術というのはそれを動かす人の教育などのことです。鉄道に関する国際基準は国によって違いますが、JR東海はその基準さえも輸出して、新しい価値を提供しようと試みています。このような大規模な仕事ができる点は、JR東海の特徴だと思います。
A:海外に人の教育や仕組みを包括的に提供なさるというお話でしたが、それは世界的に見ても、日本の海外事業の仕組みというのが評価されているから、ということなのでしょうか。
櫻井:東海道新幹線は、大量に、高頻度で安全に人を輸送してきた実績と経験があるので、それが評価されているのではと思います。
B:ハードな部分以外にソフトな部分もお手伝いするとなると、コストがかかってしまうと思いますが、その中であえてJR東海さんが挑戦される理由は、どういうところにあるのでしょうか。
鈴木:安全を守るためには、ハードとソフトの双方が必要であると、我々は考えています。加えて、海外展開に成功すれば、それだけ日本の鉄道システムにかかわる企業のマーケットが増えることになりますので、各企業の技術革新も促進されますし、結果的にコスト低減にもつながる可能性があります。海外展開は、自社の利益追求だけではなく、日本の産業を引っ張っていくという意義もあります。
A:新型コロナの流行でJR東海さんが影響を受けたことはどういうところでしたか。
鈴木:コロナ禍でお客様は移動を控えられるので、今日の時点では輸送量はかなり減っています。ただ、当社にとって新たな気付きを得ることもできました。。例えば、「ずらし旅」という言葉はご存知でしょうか?人が集まるという状況が好ましくないコロナ禍において、鉄道に乗るお客様をできるだけ分散させて、乗車してもらう仕組みを作る事ができれば、より多くの方にご利用いただけるのではないかという発想から生まれた企画です。
例えば京都に行く場合、日中は人が多く集まりますが、早朝の時間帯にずらして移動していただく。するとJR東海がコラボしているお寺が、普段は開帳していないものを朝の時間帯に限り開帳してくれる。このように、新型コロナによる大きな社会の変化に合わせて、新しい企画も生まれています。
A:学生もコロナ禍で家に縛られる感覚がしばらくあったのですけれど、やっぱり旅には行きたくて、密にならない場所を探しつつ出かけたりもしました。そうした新型コロナの流行した後の新しいニーズを読み、新企画が生まれているんですね。
C:コロナを契機に、ホテルなど鉄道以外の方面に事業展開も検討されていたりするのですか。
鈴木:そうですね。今は鉄道以外の面での収入を増やしていく工夫をする必要があると考えています。当社は不動産や流通業が盛んで、名古屋地区にはJRセントラルタワーズやJRゲートタワーという駅ビルや商業施設を持っています。これからもそういった領域での成長は続けられるようにしたいですね。
D:事業転換という話に関連して、JR東海さんはこれから超電導リニアによる中央新幹線建設に大きく力を入れていくという記事を拝見しました。企業全体でリニア建設を進めていこうとしている大きな理由と、最終的な目標を教えていただきたいです。
稲永:一番の目的は、現在東海道新幹線一本だけでつながっている日本の大動脈、東京・名古屋・新大阪をつなぐ輸送の二重系化です。今後、万が一南海トラフ地震などの災害が起き、東海道新幹線が止まってしまったら、日本は経済の中枢の機能を損ないます。東海道新幹線は、東日本大震災の時にすぐに復旧できたように、地震に強い設計をされています。ですが、日本の発展・経済に貢献するという理念を確実に全うするために、万が一に備えて、東京・名古屋・新大阪間にもう一本、南海トラフを避ける形でリニアを通すことを目指しています。
鈴木:今建設中の新幹線には、「中央新幹線」という言い方と、「超電導リニア」という言い方があって、これは中央線幹線をリニアという当社にしかない技術を使って作るという意味なんですね。「二重系化」をリニアによって果たすことで東京と名古屋の間を40分で結ぶことができます。移動時間の短縮は、さらに日本人の労働生産性を高めるでしょうし、旅をするなら今までより遠くの地方へ足を伸ばせるようになることで、そこでも新たな付加価値が生まれます。
A:旅行スタイルは本当に大きく変わりますね。
櫻井:例えば、新幹線とリニアを乗り継げば、東京から福岡まで4時間でいけるようになります
B:本当に移動のスタンダードが変わろうとしているのですね。
A:移動の方法も選べますね、いいなあ。
鈴木:我々も、そうやって使い分けてもらいやすいような、様々な商品設定をしていくことが出来ると思いますし、お客様のニーズに応えた色々な使い方ができるようになると思います。
E:泊まりの出張がなくなりそうですね。
鈴木:そうなんですよ。すぐ帰れちゃう。
櫻井:早く帰ったらその後オフィスで仕事をしないと行けなくなるかもしれませんね。
(一同笑い)
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