9回表ツーアウトから逆転本塁打を浴びる歴史に残る逆転負けを喫し、あと一歩で優勝を逃した慶大野球部。秋の雪辱を晴らすべく、3季ぶりの優勝へと向かう慶大野球部をまとめるのが主将の福井章吾選手(環4)だ。名門・大阪桐蔭高校時代から主将としてチームをまとめた福井選手に、春季リーグ戦に向けて話を聞いた。

福井選手の主将としてのポリシーは何より「チームファースト」であること。チームのことを考え、チームが勝つために何をしたらいいかを常に考えて行動しているという。昨年、長年正捕手として活躍した郡司裕也選手(現中日)が卒業し、初めて正捕手として1年間試合に出続けた。「郡司さんが抜けたから負けたと言われるのが本当に嫌で必死で頑張った1年でした」と話す。捕手として2季連続ベストナイン獲得、打率3割越えの大活躍だった。「チームファーストの精神が結果に繋がった」と分析する。

春からチームの課題として、野球以外の部分にも力を入れてきた。「選手一人一人が当たり前のことをきちんとできること」が、何より大切だと考える。「捕手として試合に出て、他大学と野球の技術は大きな差はないと感じた。だからこそ、野球は人と人との対決であるので、『人間性』で勝負しなくてはいけない」と痛感しているという。

そんな慶大野球部の今年の強みは「一体感」。「副将をはじめとする4年生がチームを良くするために動いてくれている」と語る。主将に就任してから、様々な練習に対してリーダーを設け、色々な角度からチームを盛り上げる体制を作った。その結果として、チーム内での会話が増え、考える力がついてきたと感じているという。

今年の慶大の投手陣は昨年と違い、リーグ戦出場経験が浅い投手が多い。「経験値は浅いが、ポテンシャル的にはリーグ戦を戦える投手が多い」という。「バッテリーとして考え、1年間捕手として経験したことを生かして投手をリードするつもり」と話す。期待の投手には橋本達弥投手(環3)を挙げた。「彼に頑張ってもらわないと勝てないと思う。力のある直球と落差のある変化球、周辺技術が高い選手なので、大舞台でも物怖じせずに投げてくれると思います」と期待を寄せる。

オープン戦では生井惇己投手(総3)が結果を残している。昨秋に劇的な逆転本塁打を打たれた投手だ。「悔しさを持って新チームが始動してから様々なことに挑戦している。あの本塁打の場面から立ち直るのは難しい部分もあったと思うが、とても頑張っている」と話した。

あの早慶戦2日目の試合について、「勝ちに焦ってなかったですし、正直冷静でまだ大丈夫だと思ってやっていた。本当に一瞬の隙で負けてしまうのだと痛感した試合だった」と振り返る。打たれた生井投手には「打たれたら捕手の責任だから、(生井投手は)悪くない。来年もう一回早慶戦で取り返そう」と声をかけたという。

一方野手は、下級生の頃から出場している選手が多く残る。「昨年の六大学の投手はドラフト1・2位指名をされる程レベルの高い投手が多く、1点を取る難しさをわかっている打線。経験値が有利になる」と話す。昨年の早大の早川投手などの速球派の投手に比べて、今年の六大学の投手は明大の竹田投手など技巧派な投手が多い。「ボール球を振らないことに尽きる」と対策を教えてくれた。

六大学野球では大阪桐蔭時代のチームメイトとの対戦機会も多くある。「いつ対戦しても不思議ですし、他の選手とは違って打たれたくない思いも打ちたい思いもありますし、毎回ワクワクします」という。誰よりも知っている選手であるからこそ、抑える秘訣もある。「勝負所では打たせないというのは頭に入れています。」と話す。

一番脅威になる大学は、早稲田大学だという。「バランスが良く野手も投手もレベルが高い。そして何より去年優勝を経験しているのが大きいので、総合的に早稲田大学です」と敵を見据えた。

正捕手としての個人の目標は3季連続のベストナイン。「捕手のベストナインはチームの勝利とつながってくるので頑張りたい」と話す。抑えたい打者は早大・蛭間拓哉選手。咋秋の早慶戦で逆転本塁打を放った選手だ。一方、特に打ちたい投手は法大・三浦銀二主将。慶大の初戦は法大とのカードになるため、完璧なスタートダッシュを決めたいところだ。

1アウトをとる難しさは六大学の中で一番わかっている。「昨秋の悔しさを晴らすべくチーム一丸となって、一球一球を大事に勝負すること。一つでも多くの点を取れるように頑張っていきたい」と意気込んだ。一瞬の隙、たった一球に泣いた咋秋の早慶戦。まずは早稲田に勝ち雪辱を晴らすこと、リーグ戦で優勝すること。そして、大学選手権大会で日本一になって堀井哲也監督を胴上げすること。慶大野球部の初戦はついに明日。勇姿を見届けにぜひ神宮球場に足を運んでほしい。

(山本結以)

 

◇福井章吾(ふくい しょうご)

環境情報学部4年。大阪桐蔭高校出身、168cm78kg。高校時代は主将として2016年選抜優勝。高校の先輩である森友哉選手のフォームを真似した打撃フォームが特徴。キャプテンシー溢れる人間力の高い選手。