音楽で人々に影響与えたい
「アジアを代表するバンドになりたい」。そう語ってくれたのは総合政策学部1年の平尾喜昭さん。彼はZIN―SILというバンドのボーカル。バ ンドでは、YOSHIという名前で活動している。大学生活の傍ら、バンド活動、企業コンサルタントと3足ものわらじを履き、多忙な日々を送っている。
入学して3カ月。慶應の印象を聞いてみた。「子持ちの人や一旦会社に入ってから入学した人など、(自分の周りには)面白い人が多い。また塾生は信念をしっかり持っている。授業というよりも、周りの人間に刺激をもらっている」
大学生活を満喫している彼だが、実は「大学に行くつもりはなかった」らしい。皆が右へ行くなら自分は左へ。高校時代、周囲が当然のように大学進学を考えている中、世間一般と同じように行動するのは嫌だった。
そんな彼が、何故慶大に入学したのか。転機は昨年9月。チャリティーイベント『a piece of peace』を企画し、スタッフ約60人をまとめた。その時、人を動かすことの大変さを実感した。「組織というものを知りたい」。そう思った彼は、大学へ の進学を決意した。企業コンサルタントの仕事に関わっているのも、組織を知るためである。
ただ、軸はあくまで音楽活動だ。自身の両親がボーカリストで「幼い頃、普通の日本語を話す前にレット・イット・ビーを歌っていた」という程、幼いころから音楽に慣れ親しんでいる。
しかし、なぜこれほどまでに音楽に熱中して取り組んでいるのか。そのきっかけとなったのは、中学3年の時に参加したライブイベントだった。
客席の最前列に、車椅子の人が座っていた。始めはつまらなそうに座っていたが、ライブが進むにつれ、次第に周りと同調し盛り上がっていった。最後には車椅子から落ちそうなほど熱狂する姿があった。
「こんなにも、音楽には力があるんだ」。ライブでの実感が、現在の彼の音楽活動の原動力となっている。
7月5日に七夕祭でのライブを終え、今後は8月2日のバンド復活ライブ、年末の12月21日には去年に引き続き、2回目となるチャリティーイベ ント『a piece of peace』を控えている。今回は「戦争」をテーマに映像・演劇・ライブを予定しており、収益金は地雷撤去に当てられる予定だ。
「音楽を一つのツールとして、社会に影響を与えたい。ライブに来て一瞬でも平和の大切さを感じてくれたら――」。今後の益々の活躍が楽しみである。
(甲浩子)