エナジードリンクでお馴染みレッドブルが、世界を変える革新的アイデアの創造と実現、そして次世代イノベーターの育成をめざすプログラム「Red Bull Basement」を主催。開催3年目にあたる今年、日本代表に選ばれた塾生の袴谷優介さん(文4)に、hummingbirdと呼ばれる音力発電のプロジェクト、日本代表としての活動、そして世界38カ国のキャンパスから学生たちが会したGlobal Workshopなど、貴重な体験を語ってもらった。

 

hummingbird 音力発電のアイデア

今年、Red Bull Basementの日本代表に選ばれた袴谷優介さんの所属するチームが発表したのは、hummingbird(以下ハミングバード)と呼ばれるプロジェクトだ。

このプロジェクトは端的に言えば、音力発電のアイデアだ。ハミングバードという名前は、くちばしで水を運び山火事を消そうとしたハチドリの童話から由来している。

音から電気を生み出すこと自体は10年程前から進んでいる研究分野であり、目新しいものではないそうだ。そこで、音力発電をどの場所で使うか、用途に着目し考えるというのが、袴谷さんの所属するチームのテーマだった。

このアイデアが思いついたきっかけは、袴谷さんのチームメンバーである須田隆太郎さん(東京大学工学部在学中)が、コロナウィルス感染対策として換気で窓を開けている地下鉄に乗ったときだった。電車内の騒音をどうにかして「ヒーロー」に変えられないかと思ったそうだ。

「太陽光は日中でしか使えない。音ならどこにでもある。だから、それを発電に使えれば凄いことができると思いました」と袴谷さんは語る。

日本代表としての活動

Red Bull Basementに応募するにあたって制作した動画※1は、アプリやデバイスなど技術的な面を詳しく伝えるよりも、1分間という時間制限の中でいかに未来をみせるか、視聴者に想像力を働かせてもらえるかを重視した。その後、一般投票で上位チームに残り、審査員からも、アイデア単体ではなくそれをどう使うかビジネス視点に立って考えている点などを評価され、日本代表に選ばれたという。※1https://youtu.be/VyJg-g7qYho

袴谷さんとチームメンバーの皆さん

日本代表に選ばれてからの1カ月間は、考えがまとまったり、振出しに戻ったりを繰り返し、苦しい時間を過ごしたという。週1でメンターを交えた話し合いがあったが、数人いるメンターが交代するたびに結論が変わっていったそうだ。

「スマホを声で充電するというアイデアや雨の中で光る傘など学生らしいアイデアが出ましたが、その度に『本当にやりたいのか』『仮に売っていたとして買いたいか』というメンターからの問いかけに、うまく答えられませんでした。正直、自分たちはアイデアが煮詰まってない状態で代表に選ばれてしまったんです。考える軸がぶれ続けました」と袴谷さんは言う。

「その時、あるメンターからの『目的意識をしっかりもとう』という何気ない言葉に、自分たちは何のために参加しているかをもう一度考えさせられました。それまでは、なんとなくグローバルウィナーになろうという意識だけで動いていました。でもそれ以降、メンバーの4人全員が音力発電に魅力を感じていることは確かであり、また、音力発電という考えが世間に認知されていないのもまた確かであるということを改めて仲間内で確認できました。そして、音力発電の認知を高めること、その先がかりとしてまずは今後大きな影響力を持つであろうGlobal Workshopの各国代表者と審査員らに音力発電の魅力を認めてもらうこと、それが今回のプロジェクトの第一目標になりました」

(次ページ:Global Workshopの体験、そしてRed Bull Basementで得られたもの)