11月22日と23日の2日間、第62回三田祭が完全オンラインにて開催された。毎年約20万人、約420もの団体が参加する三田祭。今年は新型コロナウイルス拡大防止の観点から、模擬店の出店を中止し、ステージ内容や講演会の様子をオンラインで配信する形式に切り替えて実施された。メインステージはユーチューブライブでの生配信、それ以外は録画したものをユーチューブで配信し、視聴者は気になる企画をいつでも手軽に見ることができた。ステージ企画には約200団体が参加し、視聴者を盛り上げた。スペシャルゲスト講演会では、塾生の青木源太アナウンサー、宇内梨沙アナウンサー、さらには市川猿之助氏が登場し注目を集めた。
「三田祭当日は、期待と不安が織り交じった気持ちでした。とはいえ、この半年間、やれることはやり切ったという想いだったので、自信はありました。」そう語るのは第62回三田祭実行委員長の柴田健一さん(政・4)だ。
「やっぱり三田祭はいいなと思いました。オンライン開催になって、例年と変わるもの変わらないものがありましたが、これまで脈々と続いてきた三田祭の核心的な部分は変わらず感じることができたのではないかと思います」
オンライン開催ゆえに、多くの人と出会い、話せる、そんな三田祭の醍醐味が失われてしまったのは残念と唇を噛む柴田さん。その分、感じた想いは人一倍だ。
「厳しい現実に直面した2020年だったからこそ、一人一人が試行錯誤して挑戦を積み重ねる姿を間近で感じることができた。その姿こそ、塾生の放つ『若きチカラ』であり、三田祭を作ってきたものだと実感しました」
試行錯誤を繰り返し、挑戦を積み重ねたのは三田祭実行委員会も同じだ。三田祭をオンラインで開催するという前代未聞の試み。当然のことながら、誰もが初めての経験であり、その準備は一筋縄ではいかなかった。
モデルケースもなかったので何を参考にすればいいかわからなかったという柴田さん。準備当時を次のように振り返る。
「当初 、VR だけで三田祭を行うという案もありました。しかし、『より多くの人が参加できて、楽しむことができる三田祭とは何なのだろうか』という命題を考え続けた結果、WEB を起点にして様々なコンテンツを発信していくという形態に落ち着きました。そこからいかに学園祭らしい WEB サイトができるか、そしていかにわかりやすく、楽しいプラットフォームにできるか、委員と話し合いを重ねました。合意を取り付け、実現するまですべてが大変でした」
先例のない難題に対し、自分たちで全て考え、話合い、オンライン三田祭の実現までこぎつけた三田祭実行委員会。当日はさまざまな課題もあった。
「当初予定していた時間に配信ができなかったり、音声が聞こえなくなるという配信トラブルがありました。ほかにも WEB サイトが分かりにくい、企画までのたどり着き方がわかりにくいという声もあったので、より企画がわかりやすく楽しめるようなプラットフォームが作れるように反省を活かしていきたいと思います。来年度以降、後輩たちには、より多くの方に参加していただき、楽しめるような三田祭を実現してほしいですね」
今年度、参加者があっと驚く企画の一つがバーチャルキャンパスの実現だ。VRにて三田キャンパスを忠実に再現し、まるでその場にいるような錯覚にさせられた読者も多いだろう。
「WEB サイトは単に情報を得るという役割だけにとどまらず、プラットフォームとして操作することそのものに楽しみを見出せるよう、3D モデリングを行い、三田キャンパスを周遊できるようにしました。参加者がいじっていて楽しいWEB サイトを構築することに心掛けました」
いつでもどこでも気軽に三田祭に参加できたところは良かったと振り返る柴田さん。オンラインならではの利点もあった。
「誰もが人混みや移動時間なしで三田祭に参加できたことは参加ハードルが下がり、非常に良かったのではないかと思います」
開催前は、本当に三田祭のWEB サイトにアクセスしてくれる人がいるのか、そして客観的に見てこれが三田祭と呼べるものになっているのか不安もあったのだという。しかし、終わってみればオンライン開催でありながら大きな盛り上がりをみせた。
三田祭のフィナーレとも言える後夜祭では感極まる場面もあった柴田さん。参加団体への感謝の気持ちを忘れることはない。
「プロのように完成度がひたすらに高い演目や環境ではないけれども、一人一人がなにかしらの想いや気持ちをもって三田祭に挑んでいて、大いに勇気づけられました」
オンライン開催であったとしても、三田祭は個々の心に静かな闘志を沸き起こさせる。この2日間、あなたはどんな三田祭を感じ取っただろうか。
(佐藤伶香・水口侑)
※写真は三田祭実行委員会提供