東京六大学野球史上初となる、夏に一試合総当たり戦での開催となった春季リーグ戦。それまで全勝で勝ち進んでいた慶大は、同じく全勝で勝ち進んでいた法大との優勝をかけた直接対決で敗北を喫する。戦力が揃っていながらも、あと一歩及ばず優勝を逃してしまった慶大。秋季リーグ戦まで残り1カ月を切った今、春の悔しさをバネに優勝へどう向かっていくのか、また春季リーグ戦で見つかった課題などを主将である瀬戸西純選手(政4)、副将である木澤尚文投手(商4)に聞いた。

 

真夏の春季リーグ戦は異例尽くしの開催となった。観客は上限3000人、六大学野球の醍醐味でもある応援団はなし、一試合総当たり戦など。今までと違う環境での開催について瀬戸西主将は「疲労をためない体づくりを意識して準備した」と話す。8月の開催が決まってから、慶大は戦い抜く体力をつけることに全力を注いだ。食事、睡眠にいつも以上に力を入れた夏になった。また、応援団がいないことについて木澤副将は「寂しい」と言いながらも「選手間のコミュニケーションは取りやすかった」と振り返る。

主将として試合全体を振り返って、今季を「課題が多く見られたリーグ戦だった」と言う。特に守備面での課題が多く見られた。その中でも、初めてスタメンに入った選手や初出場の選手の活躍が目立つ春となった。特にベストナインにも選出された新美選手(政3)について瀬戸西主将は「コロナの状況下でも準備を怠らず、一番練習をしていたといっても過言ではない選手」とし、「その姿を見てきたので、こうして結果が出て本当に嬉しい」と話した。また瀬戸西主将自身もベストナインを獲得し打率も全体5位という結果を残している。「六大学の150㌔を超える投手の真っ直ぐに振りまけない取り組みを冬から春にかけてやってきた成果が多少なりとも形として現れた」とし、「今までの成績を割り切って新たな気持ちで打席に立てたのは堀井監督のおかげ」と話した。

副将でありチームのエースでもある木澤投手は今季を振り返って、「打者が泥臭く点をとってくれたのに、投手陣が抑えきれなかった」と反省。自身も先発、中継ぎ問わずタフに投げチームを勝利に導いてきた。立大戦では16奪三振を記録するなど活躍が目立った。「登板回数多く投げられたところは収穫」としながらも「技術的なところはもっと突き詰められる」と話す。優勝した昨年の秋季リーグ戦では怪我に苦しんだ。約1シーズンぶりの登板となった今季。「今度は自分が貢献してチームを勝たせることをモチベーションにしてきた中で、主戦的な立場で投げられたことは成長」とする一方で、「チームを勝たせられるところまでは達成できていない」と秋への課題とした。

全勝優勝まであと一歩のところで敗戦した法大戦。「圧倒的な力量の差を感じた。粘りきれなかった」と木澤副将は悔しさを滲ませた。

昨年度卒業した郡司選手や津留﨑投手らの活躍は刺激になっているという。「開幕前にメッセージを頂いたり技術的な質問に答えて下さったりと、忙しい中で自分たちを気にかけてくださっているのが嬉しい」と木澤副将は話す。

春季リーグ戦から約1カ月後の開催となる秋季リーグ戦。2試合、勝率制での開催が決まっている。「実力が拮抗している。接戦が増える」と瀬戸西主将は秋を見据えた。練習試合や春に見つかった課題をどれだけ潰せるかが鍵となる。「どんな投球でも泥臭く、チームの勝ちだけを意識してマウンドに上がりたい」と木澤副将。「10試合、全勝して優勝したい」と瀬戸西主将。ラストシーズンの優勝にかける思いは誰よりも熱かった。

【試合戦評】異例の総当たり戦となった今季の六大学野球。2連覇がかかった今季の一戦目は東大戦。1点差で迎えた7回に追いつかれるも、9回に下山(商2)が適時打を放ちサヨナラ勝ち。何とか初戦を勝ち取ると、続く立大戦、明大戦、早大戦と順調に勝利を重ねる。迎えた法大戦では2回に福井(環3)の適時打で先制するも4回に逆転を許し、法大に敗れ、惜しくも2位となった。

(山本結以・吉澤菜々美)