練習は不可能を可能にす
かつて慶應義塾大学塾長を務め、體育會の発展に尽力した小泉信三先生の言葉です。

外に出て体を動かす機会が減った慶大生の皆さん!
スポーツをテーマにした映画を観て、爽やかな気分になりましょう!

『42〜世界を変えた男〜』(2013)

MLBでは全球団の永久欠番とされている42番
42とは、ジャッキー・ロビンソンの背番号です。
この映画は、メジャーリーグ初の黒人野球選手となった、彼の実話の物語です。
野球部詳しい人はもちろん、野球の知識を知らずとも楽しむことができる映画になっています。

第二次世界大戦が終わったまだ間もない1945年。
当時ブルックリン・ドジャーズのゼネラルマネージャーだったブランチ・リッキーが、「ドジャーズ球団に黒人の野球選手を迎える」、この大きな決断をするシーンから物語はスタートします。

それまでMLBでは、ある「慣習」がありました。1946年時点でメジャーリーグには16の野球団がありましたが、登録されている400人の選手のうち、400人が白人選手。黒人には黒人のニグロ・リーグと呼ばれるものがあり、まだ野球は白人と黒人で分けられていた時代でした。この決断はまさにその慣習を破るものでした。

(画像はイメージ)

観客、マスコミ、審判や敵チーム、そしてチームメイトからの差別に屈することなく、プレーをし続け、観客やチームメイトが徐々に彼を受け入れていく過程が描かれており、とても後味が良い。

ブランチ・リッキーを演じるハリソン・フォードもさすがの貫禄で、彼の一つ一つの言葉に重みがあります。
「カネの色は白でも黒でもない、緑色だ」と、まるでお金儲けのために始めたかのように思えるブランチ・リッキーですが、彼がジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)にかける言葉や、メンバー入りを拒む監督やチームメイトを厳しく諫める姿を見ると、何か他の理由があるのだとわかります。魅力ある人物です。
ジャッキー・ロビンソンの「やり返す勇気のない選手になれと?」という問いに「いや。違う。“やり返さない”勇気を持つ選手になるのだ」と答えるシーンは、非常に心打たれます。

映画の中でジャッキー・ロビンソンに向けられる差別の描写が丁寧で、当時のアメリカ全体を覆っていた差別意識が感じられます。敵チームの選手がジャッキー・ロビンソンを試合中に罵倒するシーンは、見ているだけで不快な気分になります。
この時代の人種差別がどのようなものなのか理解できる、「差別」という言葉に厚みを持たせられるような映画になっています。

『がんばれ!ベアーズ』(1976)

ゴロも取れない、内野手が外野へダッシュ、試合中もエラーだらけ…野球チームと呼べるのかも怪しい、問題児ばかり集まった弱小少年野球チーム、ベアーズ
そんなベアーズの監督に、元マイナーリーグ選手で、今は酒に溺れた冴えない清掃員のバターメイカーが抜擢される。野球センス抜群の少女アマンダ、女好きの不良少年ケリーを引き入れて、勝利に奮闘する少年少女たちを描いた素晴らしきコメディです。

このダメダメ監督を演じるウォルター・マッソーの演技がなんとも絶妙。
ジュース缶にお酒を注ぎ、堂々と飲酒運転する監督に、少年たちは完全に呆れ顔。それでも少年たちは生意気なことを言いつつ、実は監督の指示を守っている。
だらしなさや口の悪さが目立つ、いわゆる冴えない男ですが、「当てにはできないけれど信頼できる」、そう思わせる不思議な魅力があります。

(画像はイメージ)

少年野球の物語だからといって、侮るなかれ。
ベアーズのメンバーは、決して真面目とも優秀とも言えません。けれど純粋さはピカイチ。ただ野球というスポーツを楽しみたい! プレイするなら勝ちたい! 負けて恥をかくのは嫌だ! スポーツへの熱い想い、勝利への貪欲さ、自然と生まれる羞恥心を、彼らは汚れないまま小さい体に持っているのです。
この頃は「真の勝利」がどんなものか、直感的に分かっていた。私たちは大人になるにつれ理屈っぽくなり、いつの間にかその直感は鈍くなってしまうのかも。
そんなことを、考えてしまいます。
自分たちの欲にとことん真っ直ぐな少年たちを見て、懐かしさだけでなく、羨ましいと感じるはず

ぜひ1度はご覧いただきたい映画です。

テイタム・オニールが演じるアマンダを見るだけでも、この映画は見る価値ありです。本当に可愛いですよ!

『タイタンズを忘れない』(2000)

キング牧師の死から間もない1971年のヴァージニア州。そこで結成された白人と黒人の混合フットボール・チーム「タイタンズ」の活躍を描く、実話に基づいた物語です。

(画像はイメージ)

この映画は爽快なスポーツドラマであるとともに、今なお残る人種差別問題について訴えかけています。
偏見と差別は「相手を知ろうとしないこと」によって生まれるものです。初めはいがみ合っていたタイタンズのチームメイトたちも、相手のことを知って受け入れることで「黒人」「白人」ではなく「人」として向き合えるようになりました。

迫力ある試合のシーンも見所です!巨躯がぶつかり合う音、軽快な吹奏楽、熱気に満ちた観客席から上がる声……まるで実際にスタジアムでタイタンズを応援しているかのような感覚に陥ります!

そして劇中で流れる60~70年代のノリノリな名曲!特にマーヴィン・ゲイの「Ain’t No Mountain High Enough」は印象的に使われています。

音楽好きで気のいいコーナーバックを演じる、若かりし頃のライアン・ゴズリングにも注目です。

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル 』(2017)

(画像はイメージ)

トリプルアクセルで全てが変わった

実在する元フィギュアスケート選手トーニャ・ハーディングの波乱に満ちたスケート人生を、ブラックなユーモアたっぷりに描いた映画です。

DV母の下でスケートに打ち込んできたトーニャは、アメリカ人女性として初めてトリプルアクセルを跳びました
しかし同じくDV気質の夫との生活によって、彼女はスケート界を揺るがすスキャンダルに巻き込まれていきます……。

トーニャの周囲にいる強烈な個性を持った人々の描写も面白いですが、フィギュアスケートの競技シーンには特に魅了されました。
氷上で生き生きと舞うトーニャ役のマーゴット・ロビーの美しさに、きっと圧倒されるはずです。

『ラストゲーム 最後の早慶戦』(2008)

出陣学徒壮行早慶戦」をご存知でしょうか?

この映画は、「最後の早慶戦」としても知られる1943年10月16日に早大戸塚球場で行われた試合について描いています。

当時太平洋戦争の戦局が悪化し、東京六大学野球連盟は解散、学生の徴兵猶予も撤廃されました。そのため早大と慶大の野球部員たちも戦地に赴くことを余儀なくされたのです。

そんな中、当時の慶應義塾塾長 小泉信三氏石坂浩二さん)と早大野球部顧問 飛田穂洲氏(柄本明さん)が部員たちのために早慶戦の開催を決心します。

私たちは今、好きなスポーツを好きなだけすることができます。しかし、そのようなことさえ叶わなかった時代があるのです。

神宮球場で『若き血』と『都の西北』を青空に響かせるとき、早慶戦を開くことのできる平和の尊さに思いを馳せてみてください。

 

(金子茉莉佳・村瀬巧)