春季は打線が活発だった慶大だが、秋季は春季に満塁弾を2本放ち、今季も主砲として期待された佐藤翔がスタメンを外れることもあったことに象徴されるように、極度の打撃不振に苦しんだ。相場監督は「打撃重視でメンバーを決めている」と語っていたが、右投手の変化球に翻弄され、苦戦を強いられる要因となった。
低い得点力でも最後まで優勝争いに絡むことが出来たのには投打にわたる加藤の活躍が大きかった。加藤は負けたら優勝争いから脱落する開幕第2戦の9回2死から同点打を放ち、第3戦でも逆転打で勝ち点をもたらした。投げては4勝を挙げ、六大学史上20人目、平成では3人目の30勝の金字塔を打ち立てた。まさに加藤におんぶに抱っこという状態であったと言える。
加藤以外でもこのリーグ戦は早大1回戦の12回に全て4年生が打席に立ち、サヨナラの得点を奪ったように、4年生の活躍が目立った。個人では、青池が立大との開幕戦、明大戦の終盤の重要な場面での好返球でピンチを救い、ベストナインを獲得した。主将の宮田はチームの規定打席到達者で唯一打率3割を超え、守備でも再三チームを盛り立てた。
その一方で来季に向けての収穫があったシーズンでもあった。春季不振だった相澤は勝ち星こそなかったが明大戦で4連投して勝利に貢献するなど復活し、春は早大に打ち込まれた中林も球威、制球ともに成長した姿を見せた。
野手では松尾卓(環2)、梶本(環2)らがスタメンに定着した。今季は満足の出来る成績を残すことが出来なかったが、来期は主力選手として結果を残すことが求められる。
今季下位に甘んじた立大、東大は主力選手が多く残り、来季のリーグ戦は更なる混戦が予想される。相場監督就任以来4季連続3位に終わった慶大は大黒柱・加藤が抜ける。戦力的には大きなマイナスだ。しかし、逆に言えば選手間の競争が生まれ、チーム力の向上も期待できる。今季、力を発揮することの出来なかった選手達の成長が待たれる。
(湯浅寛)