本井英 選
鬼蜘蛛の尻の上下や獲物吸ふ
理3 稲垣秀俊
季題は「蜘蛛」。「鬼蜘蛛」は一メートルにも達する網をはる。その「鬼蜘蛛」が獲物を捕らえた折の様子。「尻の上下」、「吸ふ」にリアリティーがある。
あきつ発つ糸で引かれるやうにかな
経4 金子一平
「あきつ」は赤蜻蛉のこと。「糸で引かれる」に「あきつ」の飛びざまが描かれた。
捩花の捻れを指でなぞりをり
商学部講師 高橋幸吉
季題は「捩花(ねじばな)」。螺旋状にピンクの小花をつける。それを誰かが指でなぞっているのだ。
西瓜割り大人が割つてしまひけり
三田たから
「西瓜」が季題。子供に割らせようと、皆考えていたのに。
きよらかに桶をつたいぬ秋の雨
文学研究科修士1年 浜いぶき
夏が終わり秋になる。夏に降った雨はじめじめしたものだが、秋の雨はどことなくしっとりしたものだ。秋の雨を「きよらか」と形容した読み手の季節観が垣間見える。
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